三日月の蜜 (まんがタイムコミックス)
仙石 寛子
芳文社 (2010-10-07)

仙石寛子先生の「三日月の蜜」が発売されました。表紙から色々とそそるというかみなぎってくるというか。オビには「女同士ってどうやるのか知ってる?」とか始まりすぎです。

前作「背伸びして情熱」から1年半ぶりの新作とあっては期待せざるを得ません。待ちに待ったという。そして期待通りの素晴らしさとあっちゃ、胸が熱くなるというものですよ!

表題作の「三日月の蜜」全8話と、1話完結の読み切り4コマが11話で構成されている「三日月の蜜」。仙石寛子先生の作品は、絵柄が可愛いのですが恋愛の切なさが一貫しています。前作「背伸びして情熱(AA)」の表題作「背伸びして情熱」でも男子生徒と女子生徒、「赤くない糸」は実の姉弟…と、決して安易に結ばれる事がない関係の恋愛というのが特徴。絵柄で柔らかい印象ですが、内容はずっしりと重いという。

好き…だけど…」という感じで、その切なさが胸きゅん必至で私の心を鷲掴みにしやがるというもの。例えば短編「今夜は七夕」。7月7日に織姫に会いに行く彦星を想う侍女の話。

1
彦星を想う侍女

今夜晴れる事を祈ってくれと言われて「…祈りません」と言い出し「私を好きになってくれてもいいのに」と心情を吐露。彦星は織姫一筋である事が明確に描かれ、それでも彦星を想う侍女の切なさがヤバイ。振り向いてくれない人を思い続ける侍女、最後の「どうしよう」という台詞は痛く響くも胸きゅんしまくるのです。

そう、仙石寛子先生は悲恋を描くのがグンバツに上手いのです。収録されている「レンゲリンネ」や「一途な恋では」でも、結ばれない切ない恋というものが丁寧に描かれて、ストレートなニヤニヤ展開ではないものの悶絶させてくれるというもの。そして描き下ろし「間接、直接」が超ド級の破壊力というもの。

最近反抗期になった弟。姉が口付けたものをを嫌がったり、姉の後のお風呂に入るのも嫌がる弟。思春期かと思うものの…実際には。

家族で好きとか変なんだ…好きだよ

2
間接、直接

はい出ました!実の姉弟もの!
前作「背伸びして情熱」に収録されている「赤くない糸」シリーズでも、俺を100度悶死させた姉弟ものです。この決して結ばれちゃいけないんだけど、それでも…という痛々しさと背徳感が入り混じった切なさ全開の恋愛模様の破壊力は脅威ですよ。

そして、この「間接、直接」は4コマ漫画ではありません。にも関わらず違和感なく読めてしまいます。仙石寛子先生は「間接、直接」について後書きで以下のようにコメント。

私が無理言って描き下ろし。まんがホームでは描けないものを。
8ページくらいだったら、ストーリーでも4コマでも、描く内容に違いはありません

そして、4コマでもストーリーでも描く内容に違いはないとか。違和感なく読めたのは4コマ漫画の起承転結がまったくないからです。ストーリー4コマでも弱いながら4コマ目にオチはありますが、「背伸びして情熱」にも「三日月の蜜」も、4コマ漫画という形式にまったくなっていません。ただ4コマで描かれているだけ。4コマを無視したからこそ、絶妙な「間」が生まれているのも特徴。

というわけで表題作「三日月の蜜」。男運がないカフェの常連の桃子さん。桃子さんが好きな店員の杉くん。その杉くんが好きな佐倉さん。と、初めは三角関係の雰囲気を漂わせていましたが…。杉くんのヘタレに嫌気がさして勢いで桃子さんに告白する佐倉…。

3
告白したら

杉に当てつけのように告白したらまさかのOK!
百合物おいしいです…mogmog。


そして付き合う事になった桃子と佐倉。デートをして、キスをして…と順調に(?)ステップアップをしていく2人。佐倉の心の機微が詳細に描かれて、また桃子さんが本気になっていく過程とかトキメキが半端じゃない。そしてベッドシーンですよ。胸が熱くなるな!

4
ベッドシーンだと…

何が凄いって、「三日月の蜜」の掲載誌がまんがホームというファミリー4コマ誌なことですよ!女同士のベッドシーンとか、みなぎってくるというものです。また、実際にやったのかどうかと言えば、カバーを外した裏表紙のおまけ漫画で答えがあります。

Q、三日月の蜜の5話目で佐倉さんを押し倒してますが、その後やっちゃったんですか?

答えは各自お確かめ下さい。

で、痛い恋愛と戸惑う心が素晴らしいのは言うまでもありません。気持ちとは裏腹に、デート→キス→ベッドシーンと段階を踏んでいき戸惑う佐倉にニヤニヤしてしまうのです。終盤では「私、杉さんが好きで…」と言うも、心の中では桃子さんが好きという感情が抱かれているのがマーベラスというもの。

何よりも佐倉の可愛さがヤバイ。4コマ漫画形式を無視しらからこそ絶妙の「間」というか佐倉が照れたり挙動不審ぽくテンパる様子が詳細に描かれており、その破壊力はとんでもない。そう、丁寧に描写される佐倉の仕草がストライクなのです!

5
佐倉の仕草がヤバイ

ようするに、恥ずかしがり屋な女の子がテンパって赤面するの最高です。という単純な結論に達するのでした。しかし、仕草を描くのが上手すぎて頬がニヤニヤしてしまうな。マーベラス!

三日月の蜜 (まんがタイムコミックス)
仙石 寛子
芳文社 (2010-10-07)