「タビと道づれ」「鋼の錬金術師」「惑星のさみだれ」…今年は、私が大好きな漫画が堂々の終了を次々と迎えてしまい寂しい気持ちと見事に完結して清々しい気持ちが入り混じっています。

10月も私が大好きな漫画の最終巻がどんどん発売されました。寂しいけど、ちゃんと上手く完結してくれてよかったのです。

シグルイ 15 (チャンピオンREDコミックス)
南條 範夫
秋田書店 (2010-10-20)

残酷無残時代絵巻ここに堂々の完結!私は原作未読で漫画のみしか読んでいなかったのですが、最後の藤木源之助と伊良子清玄の対決は静かながらも魂がビシビシと籠った半端ない熱さでした。全ては1巻第1景の冒頭に繋がる壮絶な前フリ!

1巻に比べて源之助が清玄と向き合うまでの描写が詳細に描かれていた事は興味深いです。1巻ではサラッと清玄を見たのですが、実は宿敵を見るまでのタメが半端じゃなかったのです。

1
1話45~46ページ

1景45~46ページの間の源之助が清玄を見るまでは並々ならぬ想いが溢れていたようです。

源之助はまだ宿敵を見ようとしなかった
足を引きずる音は、さらなる剣技を予感させた
何かがあふれそうで
何かがちぎれそうな想いが張り詰めてゆく
ついに源之助は清玄を見た!

何事も皆偽りの世の中に
死ぬばかりぞ 誠なりける


ついに、1話の冒頭に繋がった「シグルイ」。静かながら両者の戦いはヤバイ。特に両者の刀がぶつかり合い鍔迫り合いの形になった時は胸が熱くなるというもの。鍔迫り合いは、源之助の得意技でもあるものの、思い出すのは7年前。道場破りにやってきた伊良子清玄と手合わせした時。始めて出会って剣を交わした時。あの時も鍔迫り合いになりました。

2
7年前と同じ鍔迫り合い

両者が始めて戦った7年前。7年前は、骨子術で動きを封じられぶん投げられた挙句に指の骨を折られました。源之助の惨敗でした。あれから7年…骨子術は左腕を無くし、清玄は跛足で盲目、何よりお互い真剣。

源之助の鍔迫りが
胸骨もろとも心臓を瓜の如く両断した


決着は一瞬でした。盲目の伊良子清玄が最期に見たのは母でした。そのまま源之助を母と思ったのか優しく抱擁。裸で抱く清玄と源之助801的に美味しい展開で、女性読者が増えるかもと思いましたが「シグルイ」は背景が腸や臓器という。

ついに決着がついた両者。源之助の勝利した時、三重の深部に潜む「魔」は跡形もなく消滅し、あとはハッピーEND一直線。そんな風に考えていた時期が俺にもありました…。

最終回「真紅」。まじヤバイ。まず、清玄を追っていくが自決。いくの背中の刺青は眼の無い龍が老虎を屠る様というもの。

3
いくの刺青

盲目の伊良子清玄が老虎・岩本虎眼を屠る刺青ですが、15巻のタイトルに刮目すると。80景のタイトルは「竜門」。鯉が龍になると例えられた源之助。そして81景「虎口前」。虎口(こぐち)は狭い道という意味らしく、それを「誠の道」と例えた清玄。

そう、竜虎相打つ御前試合において、竜が藤木源之助虎が伊良子清玄に例えられているのです。そして刺青通りに虎(清玄)の首を切断する事に…。

獄門に処すゆえ、ただちに清玄の首を切り落とせ!

戸惑う源之助に「士(サムライ)ならば、士の本分を全うすべし!」と追い打ち。サムライに憧れし農民出身の源之助は葛藤の末に清玄の首を切断。サムライに憧れていた。しかし、瞳の無い龍のようにその瞳は…。

4
瞳が無い

清玄の首を切断し、"誇り"など全てを無くしてしまった源之助。全て奪われ残ったものは約束だけ…と思ったら残酷なる結末。ハッピーエンド至上主義の私は大ダメージです。

三重は自害していた!

最後に三重の生きている姿を確認出来るのは首を切断するところ。しかも思い出したのは、三重に種付けさせようとしたシーン(9景)。この時、三重は以下のように心情を吐露していました。

5
傀儡に絶望…

「幼き頃から嫌というほど見てきた。父の仰せとあらば意志をなくした傀儡となる高弟たち」
「傀儡…男はみな傀儡」
「死のう、舌をかんで死のう」

源之助は誇りある士(サムライ)ではなく、ただの傀儡となって絶望して三重は自害したのか。だがしかし、源之助はただの傀儡だったのでしょうか。

傀儡ではない男とは伊良子清玄。「伊良子清玄は傀儡ではない」とナレーションされていました。そんな清玄の本質を決戦前に見抜いた源之助。

6
清玄の本質

舟木兄弟斬り捨てた後、清玄は嘔吐していました。当時は顔を剥ぐという残虐行為に吐いていたのかと思いましたが、そうではなかったのです。

伊良子清玄は他者に命じられて殺めるという行為に吐き気を催したのだ
何者にも操られぬ宿敵の自我を源之助は誇らしくさえ思えた

伊良子清玄は他者に命じられて殺すという行為に嘔吐していたのです。それは傀儡では決してないという自我。そこに"誇り"がありました。対して源之助は他者に言われるがままの傀儡だったのかといえば、そうではありません。清玄の首を切断した後に嘔吐していたのです。

7
源之助は嘔吐した

伊良子清玄と同じように、他者に命じられての殺めるという行為に嘔吐。源之助はただの傀儡ではなかった…。果たして、三重はいつ自害したのか。源之助が嘔吐したのを目撃していれば自害なんてしなかったのではないかな、とifの分岐を考えてしまいます。

しかし、「シグレイ」は本当に半端ない物語でした。

シグルイ 15 (チャンピオンREDコミックス)
南條 範夫
秋田書店 (2010-10-20)

シグルイ 14 (チャンピオンREDコミックス)
南條 範夫
秋田書店 (2010-03-19)

シグルイ 13 (チャンピオンREDコミックス)
南條 範夫
秋田書店 (2009-09-18)