星は歌う 11 (花とゆめCOMICS)
高屋 奈月
白泉社 (2011-04-19)

「星は歌う」11巻が発売されました。これが完結。
前作「フルーツバスケット」の大ヒットの次の作品という事で非常に期待していたのですが、期待通りの重さというか心の闇というかダークなオーラというか、読んでてウヴァとなってしまうものでした。しかし、最後に救いがあるのが高屋作品の真骨頂。

一生懸命生きている人を描き、途中で絶望した落とされ、けど最後には救いがあるとい。「幻影夢想」然り、「翼を持つ者」然り、「フルーツバスケット」然り…途中で鬱になっても読むの諦めないでいられるのは最後にどうか幸せな記憶を…というある種の安心感みたいなものがあり、「星は歌う」も見事なハッピーエンドで胸を撫で下ろしました

現地妻になるかと思ってドキドキしましたが、最後のハッピーエンドに満足。少女漫画でスリル満点な気分が味わえるなんてお得ですね!

最終巻で個人的な名シーンはサクヤとチヒロがお別れ前に2人で星を見たシーン。というかこれって、1巻でサクヤがチヒロに嬉々としながら星を説明して一番好きな星を語ろうとして誤魔化した続きじゃないですか。

「星はみんな好きだよっ」
「でも…そうだね、中でも特別なのは…」

と、1巻ではサクヤが一番好きな星をチヒロに教えようとして結局、誤魔化して有耶無耶にしました。サクヤが一番好きだった星、それは惹かれた孤独なものであるアルファルド(別名コル・ヒドレ)。それを、きちんとチヒロに教えて上げるのでした。

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アルファルド

「アルファルド…コル・ヒドレ」
「孤独なもの、チヒロくんみたいな星」
「…だから余計に好きな星」
「…大好きな、チヒロくんの…星」

一番好きな星を言おうとして有耶無耶にしたサクヤがサラッと告白付きで一番好きな星アルファルドを語りました。
ところで、「星は歌う」コミックには5ページ目(5巻は96ページ、6巻は36ページ)にポエムのようなメッセージがあります。例えば、1巻の冒頭には以下のようなメッセージがありました。

でもたぶん知ってても好きになった、好きになってた。

と書かれていた謎のメッセージ。
一体何の事かと思う事もシバシバありますが、このメッセージが作中で飛び出すのです。伏線厨の私は思わずニヤリとさせられてしまうのです。

これが作中で語られた時には、私は静かにガッツポーズを取るのでした。1巻の「でもたぶん知ってても好きになった、好きになってた」というのは、チヒロにはサクラという昔の女がいるから止めとけと言った聖と一悶着あった後にサクヤが言い放った台詞。

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でもたぶん知ってても好きになった、好きになってた

と、1巻の冒頭のメッセージがそのまま使われました。
1巻の冒頭の謎のメッセージは、サクラの事を知っても関係なくチヒロを好きになっていたという事だったのでした。恐ろしい程の伏線っぷりにビックリします。

傷つけて泣かせてばかりでごめん、この頃も今も(2巻)

優しい言葉をありがとう(3巻)

きいてるよ、ちゃんときこえてる(4巻)

せめて、凍えてしまわぬように(5巻)

優しくしたいと思った、たまらなく(6巻)

優しくしないって、言ったくせに(7巻)

ありがとうと言ってくれた(8巻)

神さま胸が思い出すたび、今も(9巻)

思った、ここに要られるならと(10巻)

大好き(11巻)

と、ポエムのようなメッセージはどれも作中に使われています。
特に3巻冒頭にあった「優しい言葉をありがとう」という言葉は胸熱であり、チヒロとユーリの決定的な戦力差ととなったのでした。

他人に人間に言ってもらえることが、あんなにも心震えるなんて知らなかった
知らなかったよ…ありがとう
優しい言葉をありがとう

と、サクヤが義理の母親に会って絶望に暮れる中でチヒロの事を思い出した際に吐露した心情。この優しい言葉というのが初めてチヒロに会った時に言われた「がんばったな」という台詞。

2
優しい言葉「がんばったな」

サクヤが義理母との関係をうまくいかずに1人で「がんばろう…」と決心し、誰にも伝わらなかった頑張ったという事。がんばれば伝わるものだってあると思っていても誰にも伝わりません。ひたすら自分は頑張れてるのか自問自答していました。

5
頑張るサクヤ

「…がんばろう」
「がんばれば伝わるものだってあるよね」
「がんばろう」

と、義理母の事など1人で必死にがんばっていたサクヤ。でも誰にも伝わりません。そして初めて言ってくれたのが1話のチヒロであり、「初めて言われた」「言ってもらえた」と感動していました。

チヒロに「がんばったな」と言われたサクヤは初めて頑張ったという事が伝わったと一発で陥落ちてしまうのです。対して、ユーリは初めてサクヤに出会った頃に、不幸面しているサクヤに対して「おまえ、ちゃんとがんばった?」と言い放ってしまいました。

4
いまえ、ちゃんとがんばった?

チヒロとユーリの違いは「がんばった」と言ったか言わなかったか。
「がんばった」という台詞が決定的な戦力差であると教えられました。勿論、チヒロはサクヤが「がんばろう…」と1人で決心していていたり過去の出来事など知りもしないで適当に言ったくさいですが、サクヤの心にズバっと響きました。

初めて会った時にに褒めてくれたチヒロに対してサクヤは嬉しかったと言いお礼をしました。

3
ありがとう…

チヒロに付きまとうサクヤに対して「…なんで、そんなに俺に構うんだ」と言われた時は「…初めて会った時、褒めてくれたでしょう?それがすごく嬉しかったんだ」と返答し「ありがとう…」とお礼を。

チヒロは「そんなんじゃない…あれは違う…」と初めて会った時の「がんばったな」という台詞は別にサクヤの為に言ったわけじゃない、と。でもサクヤの「ありがとう…」のお礼がチヒロの心に響いていました。

…新しい場所で環境で
サクラ、小さな星と出会ったよ
嫌なやつで心を開こうとしない俺に馬鹿みたいにつきまとって
でも泣き虫で、
決して彼女の為だけに言ったわけじゃない言葉に
ありがとうと言ってくれた
君に一番伝えたいと想う気持ちは多分一生伝えられない

と、8巻冒頭のメッセージである「ありがとうと言ってくれた」が5巻のラストで使われました。この5巻の回想がまんま最終回でまんま使われていたのは胸熱です。

6
最終話でも使われた


…新しい場所で環境で…
サクラ、小さな星と出会ったよ
嫌なやつで心を開こうとしない俺に馬鹿みたいにつきまとって
でも泣き虫で、
…好きになってた、椎名(その子)のこと
大好きに…なってた


これが「君に一番伝えたいと想う気持ち」でしょうか。しかし、読み返す度に「おっ」という発見があるのは伏線厨の自分はニヤリとさせられるのです。

カップリング的に言うと、自分にとってはサクヤとチヒロなど刺身にツマのようなもので、ニヤニヤとさせられ悶えたのは聖と沙己の一択です。数年後のサクヤが髪の毛切ったせいで、いまいち可愛くなかったせいで聖の成長した姿にニヨニヨとするのです。

7

って沙己と結婚してるし。
もうちょっと、結婚後の2人の変わらない聖がお嬢様的に上から目線で立場上のように見せかけて、沙己にハワハワさせられて赤面する姿が見たかったかな、かな。

とどのつまり「星は歌う」は全体的に「現実は厳しいけど、まあ頑張れ」というのが一つのテーマでした。現実に苦しめられるも、やがてはそれを乗り越えて行く子供達が描かれたわけですが、何が悲しいって、サクヤもサクラもチヒロも心の闇を作った原因がダメな親だったとこですよ。

そういえば高屋先生は「幸せ」を敢えて人偏つけて「倖せ」で統一されています。調べてみると意味はほとんど同じですが、「倖せ」には人生における事情や状態、「巡り合わせ」「回り合わせ」「命運」における幸せでもあるとか。

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倖せ

あと、最終ページが凄く良かったかな、と。
「星は歌う」の最終回は花と夢を漫画喫茶で読んだんですが(買えよ)、最後のサクヤとチヒロの2人姿はなくてサクラの「ありがとう」で終わって、おい主人公サクラかよ、と突っ込んだ記憶があったのですが最後のシーンでグッと印象が変わりました。

次回作にも超期待。

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