小学生の頃に道徳の時間で見てたテレビ「さわやか3組」が好きでした。ドラゴンボールのメンコ、カードダス、ガン消し…小学生時代は毎日キラキラしてたな。

友達100人できるかな(1) (アフタヌーンKC) 友達100人できるかな(3) (アフタヌーンKC) 友達100人できるかな(4) (アフタヌーンKC)

2009年のある日。柏直行(36歳)は出産間近で入院中の妻・幸世の元へ訪れます。もうすぐ子供が生まれる事で喜びに満ちているところに、宇宙人が地球にやってきて地球を侵略すると言い出すのです。宇宙人の言い分は、愛の存在を立証すれば地球から手を引くとのこと。色々と小難しい説明をしますが、ようは出された条件は1つ。

友達ヲ100人作って頂きマス。期間ハこの時代で直行サンが小学校ヲ卒業するマデ。出来ナかったラ人類滅亡

子供時代に戻って友達100人を作る。
出来なければ人類滅亡!

36歳のおっさんが過去に戻って友達を作っていく…。
見た目は子供、頭脳はおっさんが地球を救うですよ!これが本当に面白いってもの。大人にはない子供ならではというものを思い出させてくれてノスタルジーな気持ちになってきます。

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子供と同じ目線に立つ

36歳のおっさんなら最初は子供のごっこ遊びに付き合うのも抵抗がありました。どうしても会話も上から目線になってしまいます。でも、キョーケンに「なんでいちち上から見てやがる」と言われ本気でぶつかり合い、横チンと本気のゴッコ遊びをし、新二郎と同じ目線に立って…気付きます。

「残酷さも優しさも、目に入る全てのものも等しい価値を持つ」
「僕もかつては、このくくりの無い世界の住人だったのだ」
子供達の目には、世界が等しく輝いているのだ

現代人ってこういうのに弱いのですよ。
郷愁願望が湧きあがってきます。ドラクエ5で主人公が子供の頃に妖精を見る事が出来たけど、大人になってしまい見れなくなってしまったようなものです。子供の頃にはあった何かを思い出させてくれます。あー、俺はメンコとかカードダスとかガン消しの世代だけど分かる。

あと、藤子・F・不二夫臭がけっこうした。
たった一人で地球を救うとか「ひとりぼっちの宇宙戦争(短編集 (AA)」とか、子供達の目には等しく世界が映るという展開は「流血鬼」の吸血鬼になって初めて分かる視点というか。とみ田先生は、投稿時代にSF
モノばかり描いて賞を取れなくてラブコメ路線に変更したとか、インタビューとか読むと、本当に描きたかったのは少し不思議なSFであった事は明明白白。SF志向だったけど目が出ずラブコメ路線に切り替え。つまり「友達100人できるかな」はずーっと描きたかった作品なんじゃないかな、と。

個人的には「友達100人できるかな」はどのエピソードも珠玉の出来なのですが、個人的なトップ3といえばキョーケンこと京本健二、サチこと川本幸代、そして井森湯治。

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3位、キョーケン
直行が1周目の時は、怖くて近づけなかった程のガキ大将で喧嘩が強かったキョーケン。意図せず3人目の友達のターゲットになってしまいました。

何度も友情成立のアタックをかけますが、ことごとく無視されたりぶっ飛ばされます。喧嘩で勝ったら友達になってやると言われ、子供を殴れるかと思う直行ですが、それが上から目線であると気付き初めて直行も自分も同じ子供と考え、土手で殴り合って友達になりました。そうです、子供のヒエラルキーの上位って喧嘩が強いか走るのが早いかだったなぁと思いだすのです。

2位、サチ
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現在の直行の妻であるサチ。
しかし、小学生の頃はお互い出会っていないし存在を知りません。大学生の頃に出会う妻と小学生時代に思いきって会いに行って友達になります。現在の妻の小学生時代に出会って思わず泣いてしまう直行。

また会えるかと聞かれ「11年後の○○大学のキャンパスで」と言って、もうサチとは会わないと決心。お互いに別れ際に「またね!」と言うも、直行にとっては本来の時間軸で待ってる妻に対してか、11年後を見据えて言ったのか。とにかく、胸熱なエピソードでした。君が行く未来を僕が守るから!

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1位、井森湯治

井森湯治はとよ田先生の前作「FLIP-FLAP」の恋仇として出ており、スターシステムで今作にも登場。

1周目の直行はクラスメイトではあるもののロクに会話すらした事がなかった相手。2周目の直行の17人目の友達であり18人目の友達です。

井森は、直行と同じく未来からやってきた地球を救う為の再来者(リピーター)でした。直行の時間軸では宇宙人からサンプルに選ばれたのが直行でしたが、並行世界の未来では井森が選ばれていたのです。直行と違って井森は、実家の銭湯も潰して未来に帰りたくないと言っていました。友達を99人作った段階で止めていたのです。そして100人目に直行を選んで未来へ帰っていきました。

向こうへ帰ったら、お前を捜すよ。お前とはもう一度友達になるんだ。初めてできた同級の友達だからな

こうして未来へ帰った井森。本来の時間軸の井森くんに対して、「君ともう一度友達になる!」と言って18人目の友達に選んだのは本当に感動的。

本当に懐かしさもあり、大切ななにかを思い出させてくれた「友達100人できるかな」。先日5巻が発売されました。これが最終巻です。

友達100人できるかな(5) (アフタヌーンKC)
とよ田 みのる
講談社 (2011-04-22)

何が驚くって帯を地獄のミサワ先生が書いてたことですよ。地獄のミサワ先生の推薦文は以下のようなもの。

人に「これ読んでみて」って言いたくなる作品だと思います。

なんてまともというか普通のコメントでしょうか。逆にビックリです。
そんなわけで最終巻。ラスボスらしい相手と友達になっていきます。今まで作中で何度も登場していた、男子グループのリーダー大貫と女子グループのリーダー山本と友達になります。

思い返せば、直行が過去に遡って自分のクラスを思い浮かべた時から名前が出ていた2人です。

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3年生の時のクラスのヒエラルキーの頂点

「…女子の中心が山本達のグループ…」
男子の中心が大貫?…達のグループ…」

直行が小学3年生の頃のクラスのヒエラルキーの頂点に君臨していた、女子グループの中心人物と男子グループの中心人物である山本と大貫と友達になるのです。まさにラスボス的な2人。

・女子グループリーダー山本
中身が36歳のおっさんである直行は2周目、陰険なイジメを先導したり指揮していた山本と何度もぶつかってきました。  

「そういう考えはイカン!!」(2話)
「おい、下らない事するなよ」(12話)
「陰険なイジメなんか最低だぞ!」(12話)

と、何度か大人目線で山本を注意していました。それが、実はフラグを成立させていたと誰が想像できようか。プライドの高い女王様のようなクラスの女子リーダー。今まで何度もおっさん目線で注意していた事によってフラグが立ってしまっていたのです。

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山本

ラブがコメり出してしまうのです。
今まで衝突していた事がフラグとなっており、女子リーダーの山本は「私にそんなこと言えるの柏君だけよ」と直行に陥落てしまっていたのでした。「ラヴロマ」「FLIP-FLAP」とラブコメがニヤニヤ展開で悶絶させてくれまくったとよ田先生のラブコメはやっぱり破壊力満点。山本の言動にあやうく悶死するところでした。36歳で妻子もいる男の視点から、ドキッとときめくのは頬が崩壊してニヤニヤするってもの。

女子のリーダーであった山本は女王様気質であり、人から何かしてもらっても「ありがとう」と言えない娘でした。直行も「ありがとうってちゃんと言えよ。そういうことが出来ないと社会に出てから苦労するぞ」と注意した事もありました。さすが、見た目は子供でも中身はおっさんです。

で、山本が転校する事に。今まで思い出しもしなかったし、過去に戻ってすぐに女子リーダーと思い浮かべていたので、もしかしたら直行の1周目では山本は転校しなかったかもしれません。でも2周目で突如転校することに。チャリで山本の引越しを追いかけます。

「子供のフリして逃げてごめん!!本当のことを言うよ!」
「僕には愛してる妻と子がいて、君の気持ちには応えられないんだ!」

そしてデパートデート(?)で取ってあげたぬいぐるみ。「ありがとう」が言えなかった山本には中身おっさんの直行は結局上げませんでしたが、転校する山本に渡すのです。

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最後の山本

トラックの荷台に乗って引っ越す山本。
最後に直行にぬいぐるみを貰い風に掻き消えていましたが「ありがとう」とお礼を言っていました。胸が熱くなりまくりです。

・男子グループリーダー大貫
小学校低学年時代の男子のカースト制度で上位に君臨するのは、喧嘩の強さだったり、走るの速かったり、面白い奴でしょう。大貫はまさにそんな生徒で、クラスの出し物やスポーツで活躍し、友達も多くクラスの中心人物でした。1周目の直行はクラスの隅っこにいるおとなしいタイプ。1周目ではただまぶしく憧れの存在でした。

2周目、直行は勉強も出来てクラス1の秀才カイカイよりテストの点も良いし、クラス一喧嘩が強いキョーケンと殴り合って友達になり…いつの間にかクラス内で最も目立つ存在となっていました。それが面白くない大貫は何度も直行に吹っかけてきました。幼馴染で6人目のマリちゃんとママごとしてればちゃかしてきたり。

1周目では大した接点もない憧れていただけの男子リーダー大貫。2周目では、クラスのリーダーというかボスの立場が大貫から直行に代わっていたのです。そんな大貫に対して、自分が1周目に憧れていただけだった頃を思い出し友達成立をさせます。

「思い出せ!あの時、僕は大貫になんて言って欲しかったんだ。なんでもできる大貫に、まぶしい大貫に…」

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大貫と友達に

仲間に入れてやると大貫!!

まさかの力でねじ伏せる展開!
クラスの女子リーダーとクラスの男子リーダーと友達になった直行。初期から登場してたボス。この2人との友情成立エピソードは本当に胸熱。おそらく、ずーっと温めていたエピソードだと思いますが、なんとも印象的です。

100人目柏直行 、101人目…

2009年の直行にとって最後の1人は誰かといえば、1980年の小学3年生だった自分。36歳の直行は本来の1周目の過去の自分に伝言を残しました。

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100人目、過去の自分

最後の100人目が過去の自分とか胸熱ですね。
ちょっと疑問なのは、同じく未来から来た大貫は本来の時間に帰った後、残った本来の大貫くんは何も知らなかったこと。大貫は過去の自分と会話もせず未来に帰ったのでしょう。この直行の過去の自分と会話する事がいかに特別なことであるか。素晴らしい100人目ですね。まあ、終盤はぶっちゃけ打ち切りくさいですけど。

ラストの少しずつ大人になっていく展開が良すぎる。
100人目が過去の自分なら101人目は生まれてくる赤ちゃんでしょうか。宇宙人のルールでは家族は無効で正式にカウントされませんけど、88人でカウンターもぶっ壊れてたので、そんなルールは関係ないでしょう。

最終巻のカバー裏には、元の世界に戻った直行が同窓会を開いた様子が描かれています。本来の時間軸の直行は、世界が違うのでほとんどの人と友達ではありません。それでも、これから、また友達となるという可能性は高いのです。

特に忘れられないのは井森。
井森は直行と並行世界の住人でしたが、未来に帰って直行を捜しもう一度友達になると言っていました。直行も、過去の本来の井森ともう一度友達になりました。

全部一からやり直せばいいのさ!向こうに帰ったら、お前を捜すよ。お前とはもう一度、友達になるんだ。初めて出来た同級の友達だからな」と言って本来の時間軸に帰った井森。直行は井森に対して以下のようの。

君ともう一度友達になる!いつか未来に帰っても君を捜して友達になる。何度でも君と友達になる。またね」

17人目、井森湯治(未来から来た別世界の)
18人目、井森湯治(1980年本来の)

2回井森と友達になりました。やっぱり考えちゃうのは、直行の時間軸の世界での井森。同窓会で井森の姿は確認できます。彼らは時間も世界も飛び越えて、3度目…いや、井森の世界でも再び友達になってるだろうので4度目の友達になれたんでしょうか。

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同窓会に顔を出し井森

井森だけでなく、本来の1周目では友達でなかったキョーケン達と、もう友達になるんじゃないかというマーベラスなカバー裏でした。椎名さんへの伝言「未来で逢いましょう」も並行世界なので、会う事は出来ないけど、それでも…もう一度友達になりましょうという事でしょう。ホントに熱すぎるってものですよ。

友達100人できるかな(5) (アフタヌーンKC)
とよ田 みのる
講談社 (2011-04-22)