バチバチ 10 (少年チャンピオン・コミックス)
佐藤 タカヒロ
秋田書店 (2011-05-06)

今チャンピオンでも最も熱い漫画といえば「バチバチ」でしょう。「バチバチ」10巻では先輩力士・吽形の幕下優勝をかけた取り組みも終了し、主人公・鯉太郎にスポットが当たるようになりました。そしてまた挫折というか、弱点が浮き彫りになりました。初期から問題視された体格差がここにきて浮き彫りに。もちろん、それを補うようにさらにもう一段成長する事でしょうし、期待したいところです。

さて、「弱虫ペダル」17巻が発売されました。

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激動のインターハイ2日目クライマックス。
ゴール直前のアシスト対決なのですがこれが熱くて震えるってもの。ぶっちゃけ田所が体調不良でそれを坂道が迎えに行くという展開で、「はぁ?体調不良を迎えに行くの?」と、一気に俺の中で冷めてしまったんですけど、そんなん関係なく熱く面白いですな。

絶対に諦めない総北、王者・箱学、そしてことごとく計画が失敗に終わった御堂筋率いる京伏の3つ巴でレース終盤を迎えます。レース終盤はエースを発射させるアシスト対決。総北のアシスタントを務める今泉が、御堂筋にタックルを決められ転倒しそうになりながら立て直すのは熱い。

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今泉

「せっかく金城さんがもう一度チャンスをくれたのに」
「せっかくあの時―オレの心をひろってくれたのに―」

そして金城との会話の「1人でやらなくていいということだ」というを台詞を思い出し、心が折れかけたものの転倒だけでなく気持ちの面でも立て直すのでした。

「そうだよオレはさ…こんなところでくたばってるワケにゃいかねーんだよ。エースとアシストってヤツはさ、チーム全員の意志を背負って飛び出してんだ。みんなの力をもらって走ってんだよ!!」

絶対にゆずれねーんだよ!!もらったんだ力を意志を!先輩に鳴子に小野田に、この力を!!」

燃えるな。
1日目のレース終盤でエースはチーム全員の力を背負っていると言われ、エースを発射する時に背中を押していたのが印象的でした。どうやら、エースだけでなくアシスタントもチームの意志を背負っているようです。3つ巴のアシスト対決でも復活した今泉は絶対に譲れないという走りを見せるのでした。対して王者・箱学のアシスト新開はと言えば…。

「絶対に譲れないって走りだな総北1年今泉クン。けどそれはうちも同じでね!!」

チーム全員の意志を背負っているから絶対に譲れない、それは王者・箱学も同じである、と。総北と箱学が仲間の意志と力を貰っていると言うアシスト対決。一方の京都伏見はここまで仲間を切り捨てて走ってきました。アシストの石垣はかなり複雑そうだったのが印象的。

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石垣

軍隊のようなチームでお互いを番号か"クン付け"で呼ぶ京都伏見。そんなチームの雰囲気が好きじゃないと言っていました石垣。王者を追い詰めた(ように見えた)時も、「認めたくはないけど、こいつのやり方は正しかったかも知れん」と思いつつも項垂れていました。念願の優勝が見えても違和感を覚えていました。

感傷的になっていた石垣に対して「働けへん兵隊はいつでもきるで!」、「きるで石垣くん」と脅し、感傷や思い出話など全て捨てろと言い出していた御堂筋。スプリントのグリーンゼッケン、山岳のレッドゼッケンを獲得した時には石垣は箱学の福富に本音を漏らしていました。

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本音

うらやましい

箱学というチームを羨ましいと思った石垣。
京都伏見というチームの雰囲気が好きになれず、ずーっと違和感があった石垣はお互いが信頼するチームを羨ましがっていました。今の京都伏見はあまり好きではない、と。

そんな石垣もアシスト対決では、総北や箱学相手に必死で食らいつきます。石垣の心情は今泉や新開が仲間の想いを背負っているのとは違い、ただ京都伏見が勝ちたいの一心。

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食らいつく石垣

「御堂筋!おれは引くよ。おまえがその京都伏見のジャージを着とる限り。たとえ、ここで切り捨てられてもかまわんよ」


御堂筋が京都伏見のジャージを着てるからアシストとして引く。そこにはチームの信頼とか仲間意識など微塵もありません。石垣は1人で走っているのです。御堂筋に対して大好きだった京都伏見のジャージをゴールに届けてくれ、と。京都伏見というチームが「大好きだった」と過去形で語るのも印象的です。

そして滑って転倒しそうになってしまいました。石垣が転倒しそうな所を、御堂筋が助けるのですが、非情で仲間を切り捨てて来た御堂筋の台詞が震える。

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御堂筋

「石垣くぅんはボクのアシストなんやから!!」と言い出し、それを聞いた石垣が嬉しそうに笑ったのが熱すぎです。「ここで切り捨てられてもかまわん」と思っていただけに、拾うように転倒を助けたのはグッときますね。今泉が金城に「心を拾ってもらえた」と言ったように、御堂筋は石垣の心を拾ったようです。笑顔で「わかった」と答え、石垣のド根性引きが半端じゃなねぇ!

まあ御堂筋はアシストの役目として石垣が必要だから助けただけだと思いますが、今まで1人で走り、京都伏見というチームがあまり好きではなかった石垣は明らかに変わりました。落車しかかってから、みるみると総北と箱学に追いついて見せたのです。ド根性ここに極まりである。

総北と箱学に3mの差をゴール前まで死守するが一杯一杯で限界だったのに。限界を越えた!石垣は御堂筋に乗っ取られる前の京伏というチームをお互いが信頼できて我慢が出来るチームにしたいと言っていたのが思い出されます。

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がまん出来るチームに

「自転車で大切なんはがまんやと思っとるんや。がまんしてがまんして勝利を掴むのがロードレースやからな」
がまんは1人でやんのは大変や。けどみんななら耐えられる先に行けるんや!」

1人じゃない!
別に御堂筋は変わらないけど、石垣の中では御堂筋を仲間であると認め耐えて我慢して先に進むのです。「行くぞ御堂筋」と今まで1人で走っていたのが一緒に走り出した。1人じゃ我慢できないけど、一緒なら耐えられるし先に行ける。

「道は違えど同じやゴールへ向かう気持ちは同じや御堂筋!!」

ド根性引きをする石垣の変化は止まりません。

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京都伏見というチーム

見ろ総北、箱根学園!形は少しいびつかもしれんけどこれが―」
オレたち京都伏見というチームや!!

今まで、違和感を覚え、雰囲気が好きになれない、箱根学園というチームがうらやましい、過去形で「大好きだった」と語っていた石垣は京都伏見というチームを誇るのです。見ろと、これが京都伏見だ、と。

今、石垣の中では「スラムダンク」の1年のメガネ(石井健太郎)が山王戦で涙ながらに呟いたのと同じ気持ちのはず。「京都伏見でよかった」と。熱すぎるぜ京都伏見・石垣光太郎!