乙嫁語り(3) (ビームコミックス)
森 薫
エンターブレイン (2011-06-15)

「乙嫁語り」3巻が発売されました。
本当に絵がマーベラスすぎる。以前にも紹介しましたけど、アミルとカルルクのやり取りにニヤニヤしまくるのです。3巻でも当然2人にニヤニヤしようと思ったら、ほぼ脇役でした。それでも、おまけ4コマのデフォルメされたアミルがめがっさ可愛かった。

3巻ではヘンリー・スミスとオビに「美しく幸薄き」という第2の乙嫁タラスさんの話がメイン。長男に嫁いだら病死し、次男に嫁ぎ亡くなり、三男、四男、五男…と結婚して未亡人となったタラスさん。とりあえずタラスの赤面が物凄く可愛かった!

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赤面顔が可愛いタラス

スミスとニヤニヤな展開になるかに見えて、カルチャーギャップにビックリ仰天してしまったでござるの巻きでした。

さて、私はマガジンの「はじめの一歩」では選手の人間ドラマが大好きです。もちろん試合そのものも大好きなのですが、対戦相手がフューチャーされ、ただの対戦相手の選手の人間性や環境やボクシングをする理由が分かり感情移入するのです。

「選手」としてではなく「人間」を描くのが「はじめの一歩」。でも、たまにフューチャーされ「人間」として描かれたのにも関わらず、それが全て台無しになってしまう人もいます。

例えば速水龍一
インターハイ三連覇という高校ボクシング界のエリート選手で、スター選手がいない日本プロボクシング界を憂慮してプロへ転向。デビュー以来5勝5KOという圧倒的な実力とビッグマウスで一歩最大の難敵として登場。東日本新人トーナメントでは優勝候補筆頭で、俺がボクシング界を盛り上げると豪語していました。

何が良かったって、天才とか日本ボクシング界をしょって立つ男なんて持て囃され、自信のビッグマウスは低迷するボクシング界を盛り上げる為にモハメド・アリのようにわざとマスコミの注目を引くようにしてた事。本当にこの男はボクシング界の事を考え、地道な反復練習をこなし影で凄まじい努力をしていました。

何が酷かったって、あれでけバックボーンを掘り下げておいて試合でサックリ負けた点。一歩戦では必殺のショットガンを繰り出すも一歩に「小橋さんのワンツーの方が全然痛かった」「オズマさんのフックはこんなもんじゃなかった」と今までの一歩の敗者よりも劣ると言われボッコボコにされてまさかの1ラウンドKO負けという醜態を晒しました。弱っ!

その後、カラオケの画面に出たり、ヴォルグの技の解説兼引き立て役をこなし、再びリングに登場したら、せこい技が取り柄の小橋に人生初KO負けを喫して失神

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速水龍一

そのまま引退して作中から消えました。
読者は思ったのです。速水とは何だったのか!

例えば唐沢拓三
まあ以前にもこの男のヘタレっぷりは紹介しましたが、バックボーンが掘り下げられた時に「デンプシー対策あり」と豪語しており、試合ではデンプシーを使われもせずに速攻でKO負けという無惨すぎるものでした。

試合前には徹底的にボディーを鍛えており、ジムの先輩である真田には「なるほど…唐沢はやるべき事をよくわかっている」と言わしめており、デンプシー対策をしてボディーを鍛えまくった唐沢は善戦すると思わせましたが酷いものでした。

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唐沢拓三

「(ボディーは)耐えられたとしても5発か…6発終盤になればオレの足は止まっているでしょうね」

そして1発で止められてしまった唐沢。「ピンチを凌いで最期まで立ってればオレの勝ちだ」という台詞がマヌケすぎるものでした。2ラウンド2分15秒KO負け。心が折られたと思いきや、性懲りもなく再登場して板垣にボコされて再び醜態を晒しました。

読者は思ったのです。唐沢とは何だったのか!

大げさに試合前に人間ドラマを描きバックボーンを掘り下げるもたいして善戦する事もなく散っていく選手がいるのです。胸が熱くなりますね。しかし、速水(笑)や唐沢(爆笑)以上のネタキャラが登場すると誰が予想できようか!

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速水、唐沢を越える者

小島寿人である。
元々は一歩よりも二階級上のライト級の選手。元ライト級8位で、青木と同期で新人時代はハードパンチャーで話題となったそうですが、鈍足でアウトボクサーに滅法弱くてパンチを当てたら勝ちという試合を続けてランキングを保ち続けていました。階級を下げて一歩に挑戦する事に。

既に小島は妻の出産を機に引退を決意していました。
一歩を散々挑発し、鴨川会長や今までの一歩の対戦相手すらDISりまくる一歩は怒りがフツフツと湧き死んだ魚のような目になっていました。一歩を散々挑発したのは、一歩と全力でぶつかりたいという思いからでした。

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本当は一歩は理想で憧れのボクサーだった

小島は一歩に憧れていたのです。憧れのチャンピオンと全力で殴り合いたい故の挑発。生まれてくる子供には自分の寿人の「人」、一歩も「一」の字を取って一人と名付けようとしていました。速水や唐沢以上に、小島という「人間」が詳細に描かれていました。

ジムの後輩に必死に応援する姿、活躍する同期に心から称賛を送る姿、妻とのやり取り、実は右の拳が壊れていたという事、一歩を挑発して最後に真正面から全力でぶつかりたいと思う姿…。去年の11月から実に7ヶ月以上も使って描かれた小島という「人間」。

そしていよいよ一歩VS小島の試合が始まります。

931話、小島入場
932話、一歩入場
カーン
933話、両者動かない
934話、両者動かない
935話、両者動かない
936話、両者動かない。最後に一歩動いた

…4話も使ってパンチ一発も打たないでお見合いをしていました。私も今まで色々な格闘漫画読んできましたが、ここまでお見合いだけで引っ張るのは初めてです。なんぞこの試合。

しかし、小島が動かないのが理由がありました。一歩は試合序盤に体を沈めて左フックで来るというのがお約束のパターンでそこにカウンターを合わせれば勝機ありと。そしてカウンターを実行する小島。

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カウンター一閃

「手ごたえ―あり!!」
「当てたぞ!最高の一撃を!気絶だ!」
「やった!!」

誰もが一歩の敗北を確信。しかし、一歩は今までの対戦相手全員(速水や唐沢や韓国の何とかやゲロ道まで)を思い出し、持ち前のゾンビパワーでダウンすらせずに反撃に出るのでした。「オレにはパンチがあるのだと当たれば必ず倒せるのだ」とは何だったのか。しかもドンピシャのカウンターで倒れもしねぇ。

以下、小島の信じられないという心情。

「バカなっその態勢から持ち直すのか―っ!?」
「持ち直すどころか…」
「打ち返す気だ―っ!!」
「来たあ―っ!!」
「パンチを振り切った、この状態ではよけられない。できるコトは唯一つ」
「もらって耐えろっ幕之内は一発KOは少ないんだ」
「単発なら我慢できる」
「歯を食い縛れえっ」

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耐えてやり直しだ!!

ここからやり直し。
そうでした、一歩の単調な序盤の攻めを指摘する前までの小島は全力で一歩とぶつかって完全燃焼したいとい思っていました。本気のパンチャー同士で殴り合いたい、と。きつい減量も一歩と殴り合いたい一身から耐えたのです。

「絶対に忘れない身体に刻み込むような試合にしたい。だから挑発を繰り返した。強烈な…一番強い状態の彼と戦いたい。終わればそこに悔いも未練も残らない。あるのは刻み込まれたパンチとこの上ない満足感

一歩とハードパンチャー同士で殴り合えばきっと体に刻み込まれたパンチが極上の満足感になると思っていた小島。だから挑発して100%の一歩を引き出そうとしたのです。

さあ、始めよう。天性のハードパンチャー同士の殴り合いを!耐えてやり直しをしようじゃないか。最高じゃないですかね。背中には家族、目の前には憧れの王者。

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耐えてやり直し…?

!?

眼球が飛び出る程の衝撃で首の骨が折れたなんじゃないかという程あり得ない角度に首が回った小島。そのまま空飛んで一回転でござるの巻き。

えっと…どういう事なのでしょうか。
そのままレフリーが手を交差したぞ…。

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え…

小島ワンパンで沈む

お前7ヶ月以上もかけて一発で終了かよ!
速水や唐沢が霞んで見えるほどのやられっぷりである。ファーストコンタクトがラストコンタクトとなり1ラウンドの最初の攻防で失神KO負けを喫した小島。ひょっとして最短時間のKO負けでしょうか。

秒殺KO勝ちした一歩が下を向いて俯いていたのは、会長の教えである「大きいのは絶対もらうなよ」「丁寧に頭を振って」と試合前にも言われた事をまるで出来ずに、教えにないスタンスで雑にフルスイングで決めてしまった事が原因かと思いますけど、そんなのがまるでどうでも良くなる程の小島のやられっぷりでした。

我々読者に7ヶ月もかけて刻まれた末、唖然とするような小島の無惨なワンパンKO負け。小島とは一体何だったのか

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