スポンサードリンク
「想いの欠片」痛くて、おもしろい。そして、せつない
コメント(0)
2011年08月18日
「想いの欠片」1巻が発売されました。
「恋をするなら女に限る」「ガールズラブ」と書かれていますが、よくある百合系漫画とは一線を画しています。竹宮ジン先生の百合漫画といえば、甘酸っぱい中にある「切なさ」が上手に具合に加わっていました。「想いの欠片」はその「切なさ」がクローズアップされ、同性愛者故の苦しさなどの心の機微が響きます。
本編「想いの欠片」5話と、WEB楽園に掲載された「Love&Piece」と描き下ろし有りと大ボリューム。
主人公はミカは美人マスター目当てでカフェに通う女子高生。カフェで旦那と上手くいかずに「あたし、男の人駄目かもしれないの」と相談する人妻の為に一肌脱ぐことに。
「行きましょうか?ホテル」

寝たら判りますよ
文字通り一肌脱ぎました。
というか、女同士のキスに留まらず明確なエッチしたシーンとかビックリです。ふわふわした感じがなく生々しいというかリアルというか。つまり読んでて非常に「痛い」んです。読んでて痛いんだけど、その生々しい心情が僕のツボを突いてきてめがっさ面白いわけです。苦しい、痛い…けど感じちゃうみたいな!
「この人はただ傷付きたかっただけなんだ」と気付いたミカ。そして数年後に子供を作って幸せそうな良い顔をしている人妻と、同じく良い顔してるミカ。両者、傷付きながらも強く前向きになった感じでグッド。
2話はミカの過去話。中学生ぐらいでしょうか。
1話で人妻をお持ち帰りしたのに比べて初々しいというか色を知らない中で、「ミカめ色を知る年齢か!」というもの。
家庭教師の女性に恋して、寝てる隙にキスしたり、先生が使った布団の匂いを嗅いだり、ちょっと触れられて「ビクン」としたり。ミカは先生に夢中です。でも分かります。この先生、凄く艶めかしく魔性の女のような魅力ですから。そして2人は禁断の関係に…

先生とミカ
明確に描写されるわけじゃないのにエロティックさが半端ない。
何でもないシーンのエロさもヤバイですが、個人的一番はミカが先生の使ってたベッドの匂いを嗅ぐシーンなんて、嗅いだ後にナニを始めたっていうのさ!
そして先生とラブラブにハッピーエンドと思いきや、先生は誰とでもキスしたりするような人だったわけで、あっさりと純粋な気持ちが裏切られてしまうのでした。

裏切られたんだってばよ
「彼氏じゃないのにあーゆー事するの…?」
「ミカちゃんともしてるじゃない。いけないの?」
大人って汚い。
こうして裏切られたミカと先生の関係は幕を閉じて、1話のカフェの女マスターと出会いました。で、3話ではクラスメイトのゲイの男子に懐かれました。
そして、「想いの欠片」が一気に加速するというか目が離せないぐらい面白くなるのが4話から。今まではミカ目線で話を転がしてきましたけど、4話からはゲイのクラスメイトの妹・マユが主人公となって話が進みます。お兄ちゃん大好きっ娘の妹で最初から戦闘能力高かったんですが、マユから見たミカがかつての先生と同じように見えるっていう。

マユから見たミカ
街でホテルへ女性と消えるのを目撃して問い詰めるマユ。
かつてのミカ&先生とまったく同じ感じです。ミカさんも成長して天然魔性の女になってしまったようです。というか、5話でミカと一緒にホテル行った女性が1話の人妻だったり。なかなか時間軸の展開が面白いですね。2話、3話、4話、1話、5話という時間軸でしょうか。
今後、かつての先生を彷彿させるミカとマユの関係が凄く楽しみです。何より、マユは最初はノーマルで同性愛者を敬遠していたのに、いつのまにかミカに陥落ちてたのがグッドです。
マユがクソ可愛くて僕の心の琴線を鷲掴みですよ。

マユ
ブヒィィィィィィィ!
もうね、一挙一動マユが可愛い。だから痛さも半端ない。
「Love&Piece」はカフェのマスターの学生時代の話。
これも痛くて切なくて、でもニヤニヤしちゃう素晴らしいもの。「想いの欠片」の真髄で全てと言っても過言ではない台詞は印象的。
「女が女を好きとかやっぱり駄目なのかな…」
ここに収束するわけで。
ミカはそれを乗り越えたのかビアンであるアイデンティティを明確に確立させており、そこに至る葛藤なども見てみたいですねぇ。時間軸がバラバラで描かれるからこそ、色々と楽しみです。しかも、全て「片思い」という切なさ全開っぷり。
お花畑というか、儚いような幻想的な百合ではなく、リアリティありの葛藤や苦しみを描いた逸材。続きが楽しみです。