「マイガール」の佐原ミズ先生の新作「鉄楽レトラ」1巻が発売されました。いやはや、これは本当に心にグッときますね。ラーメンの味卵のように奥深い。佐原ミズ作品は美形しかいないのに、今作はそんなことなく。それが味わい深く引き立つ。

公式サイトのあらすじは以下の通り。

人の人生を変えてしまうほどの人間て、どんな奴だ?
小学生の頃から打ち込んできたバスケを諦め、家から離れた高校へ入学した鉄宇。現実から目を背け、他者との関わりを拒んできた彼の目にかつて失くした“夢のつづき”が飛び込んできて――

主人公の一ノ瀬鉄宇は中学時代は引きこもり。
小学校時代からミニバスをやってたのに中学からバスケを始めた人に抜かれてしまうのが信じられず。無茶をしてレギュラーを決める1on1で怪我をさせてしまい。そいつに「早く死んで来いよ」とまで言われ引きこもりに。そして高校は家から2時間もかかる場所に。

周りが見えずに奢った末の挫折を味わい、トラウマ持った心情がいちいち心にグサリと突き刺さります。高校では何も考えず何も感じず、毎日ただ何もせずに生きていこうと決めるのでした。

1
何も関わらない、何もしない

「どんな場所にいたって、もう人と関わろうとは思わない。人をうらやむ事も…自分に失望する事もない…」とスーパーネガティブで何にもない空っぽに生きようとする鉄宇。そんな彼が変わろうと決心し前に進むようになる痛く切ない青春漫画。これが泣けて胸熱。

入学式の日に、おばあさんに道を尋ねられ孫の話をされます。
内向的で臆病でいじめられて独りぼっち。スペイン舞踊を始めたけど不向きで挫折して泣いてばかりいたのが、ある日ニコニコして「私バスケット始めてみる」と。なんでもある人に出会って人生観が一変

2
ある人に出会って

「あの日、あの人に合え良かった…」「きっと孫は素敵な人に出会えたのだなって感謝したわ…」と。それを聞いて鉄宇は思うのでした。

人の人生を変えてしまうほどの人間て、どんな奴だ?

かつて屋上でバッシュを捨てようとした時に出会った以前のクラスメイトの女子。それは光と影のように正反対の2人。小さくて大きくなりたかった鉄宇、彼女は大きく小さくなりたかった。お互いが羨ましい、と。そして鉄宇は彼女にバスケットを勧め、お互いに赤いバッシュと赤いドレスシューズを交換しました。

3
靴を交換

偶然にも、お婆さんの孫がこの娘で、「人の人生を変えてしまうほどの人間」が自分だった。彼女はバスケットをして、鉄宇が失くした夢の続きを歩んでいた…という。ならば、今度は鉄宇が彼女の夢の続きを歩む…という。彼女が今度は鉄宇の「人の人生を変えてしまうほどの人間」になったわけで。

一歩を踏み出す勇気、それは贖罪のようであり、苦しいんだけど、清々しいぐらい真っ直ぐで爽やかでした。そして、誰にも関わらないと決めたのに少しずつ広がる人間関係が印象的。ちょっとずつ成長してく様が見事に青春しちゃってますよ。良い青春漫画です。

個人的には妹とのエピソードが一番。
感動したし心にグッときましたね。キモは妹ですよ。お兄ちゃん大好きっ娘の妹を数多く見てきた僕も、聖母のような妹の最高のお兄ちゃん大好きを見せつけられて完敗ですよ!

4
靴を交換

妹がまじ天使すぎる
「ダイの大冒険」のヒュンケルがマアムに見た母性というか聖母っぷりが溢れ出まくる妹。もう胸が熱くなるしかない。この妹も、幼少の頃にテストの採点で鉄宇に「人の人生を変えてしまうほどの人間」を見たわけで、妹の過去を後に知った鉄宇にとって、やっぱり妹は「人の人生を変えてしまうほどの人間」になって、鉄宇は動き出すわけで。

本人にとっては些細な事が他人にとっては「人の人生を変える出来事」になり大きな勇気や一歩を踏み出すきっかけになり、それが連鎖して広がって影響を与え世界が変わる!

大げさなようにブチ上げられてる 「人の人生を変えてしまうほどの人間て、どんな奴だ?」ってのは、結局本人にとってはちょっとした事なんですよ。でも第三者にとっては大きな出来事になり、影響を与えていく。それが実に俺を感動させるんですね。痛く苦々しいけど爽やかに清々しい、そんな青春漫画。お勧めです。
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