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おたくによるおたくのためのおたくの4コマ!
ゴトウ氏の「おたくら」が発売されました。ゴトウさんというのは古参テキストサイト『一流ホームページ』の中の人です。思い返せば僕が個人サイトという文化に触れるようになったのは10年以上前に大学で『侍魂』というサイトが爆発的に流行り、そこから一流ホームページをはじめとするテキストサイトを見るようになったのを皮切りに、ニュースサイトとかラーメンサイトとか漫画感想サイトとかの個人サイトにハマっていきました。

いうなれば、僕の個人サイト巡回の趣味は一流ホームページのおかげのようなもの。私が初めて参加したロジマトのオフ会でゴトウさんにお会いした時は、大学生の時から見てる中の人という尊敬の眼差しが、会って2分で木端微塵に崩れていったものです。カップラーメンが出来るより早いよ!それほどゴトウさんの個性が強烈で面白かったという事です。

この「おたくら」も、40路のオタク達の生体をエッセイ風の4コマにしています。いい歳したオタクならば思わず「あるある」と頷く、生々しい共感を覚える事でしょう。個人的には「見知らぬ戦友」がグッときます。近所のゴミ捨て場にアニメ雑誌が捨てられて、近場にオタクの同士が住んでいるとホッコリして数年後…。

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数年後

ゴミ捨て場には近所の同士がオタグッズを捨てていた。
引退されますか、お疲れ様でした」と祈るゴトウさん。なぜだろう、胸に熱いものが込み上げてきます。

まさにオタクは思わず共感するあるあるネタであり、一流のゴトウさんならではで笑えるオタク達の生体がエッセイ風に描かれています。オタクの生態を面白おかしく笑わせてくれるなんて初期「げんしけん」みたいですよね。アニメや漫画のストーリーやヒロインの可愛さで盛り上がり語り合うっていうオタク仲間ではよくあるアレ。

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げんしけん

アニメにしても漫画にしてもゲームにしても、自分が好きな作品を語り合う。これぞオタ友の醍醐味ですよね。好きな作品を熱く語ることはオタクにとっては至福の時ですよね。一般人からすれば気持ち悪いかもしれませんけど、それはとても純粋に清々しいものですよ。

「おたくら」もオタク同士で熱く語るわけですけど。

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熱く語る

なんだろ…清々しさの欠片もない
もちろん、ゴトウさんが笑えるようにあえてそういう風に描いたんでしょうけど、決定的に違うのは年齢からくるものでしょうか。大学生の若者のような清々しいエネルギッシュなオタク青春ではなく、可愛い女の子なんていないしラブがコメる事など絶無であり、登場人物はみんな等身大のおっさん。つまり小汚い「げんしけん」です。

むしろ、この痛々しさこそがキモで笑えるんですよね。
40路オタクの日常には禍々しいぐらいに共感してしまうのです。ああ、10年後の俺がいる、と。それをまた面白く描くもんだから、笑えるんだけど笑えない。おかしいんでかどまったく可笑しくない。グッとくるけど心臓を抉られるような。

「おたくら」はオタクの日常を面白おかしくエッセイ風に描き、それがツボに嵌るわけです。でも、オタクの日常って面白いかと聞かれれば答えはノーでしょう。なのに何でオタクの日常を描く「おたくら」が笑えるのか。

もちろんゴトウさんの日常は面白いだろうし、回りのオタ友も面白いんですけど、オタクの日常なんて部屋に籠って漫画読んでアニメ見てゲームするだけ。外に出る時はイベントか買い物ぐらいですよ。作中の「結婚のマスが見当たらず」での人生ゲームオタク版こそオタクライフ

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これぞオタクの日常にして人生

これ、ひたすらアニメ見て買い物してるコマばっかやで

まさにlこれ。
オタクの日常というか人生はそんだけです。そんな人生を「おたくら」では膨らませて面白く描くわけです。これこぞそまさにゴトウさんならではの面白さですよ。

昔のテキストサイトは日記のように日々の事を語ってるようでいて、そうではないという。だって毎日面白い出来事が起こるわけないじゃないですか。面白い出来事というネタなんてそうそう自身に起こりません。重要だったのは、いかにして面白い事を思いつくかですよ。一流ホームページのゴトウさんは日々の日常を書くようでいて、いかに面白いネタを思いついてテキストにしていたか。

「おたくら」最大のキモはオタクの日常を面白おかしく描きつつも、日々のオタクライフで面白い事を思いつきそれをネタにしている事だと思います。実体験のエッセイ風でありながら、ゴトウさんが思いついたオタネタが詰まっており、それが無性に笑える。実体験&ゴトウさんの閃きと妄想力が良い塩梅で味あります。

おたくら (電撃コミックス EX)
ゴトウ
アスキー・メディアワークス