昭和元禄落語心中(2) (KCx(ITAN)) 昭和元禄落語心中(1) (KCx ITAN)

漫画大賞2012年ノミネート
この漫画が凄いオンナ編2位
この女性向けマンガがすごい!2012(未完作品編)1位

と、様々なとこで評価がうなぎ登りの「昭和元禄落語心中」。
先日2巻が発売されました、まあ今さらなんですけどこれはクソ面白いじゃないですか。1巻のオビコメントのあらすじ紹介は以下の通り。

満期で出所の模範囚。だれが呼んだか名は与太郎。娑婆に放たれ向かった先は、人生うずまく町の寄席。昭和最後の大名人・八雲がムショで演った「死神」が忘れられず、生きる道は噺家と心に決めておりました。弟子など取らぬ八雲師匠。惚れて泣きつく与太郎やいかに…!?昭和元禄落語心中・与太郎放浪編、いざ幕開け!!

ストーリーはオビの通りで、出所したばかりのヤクザだった男が落語界に入るというもの。出所したばかりの与太郎が向かった先は、生きる伝説、昭和最後の大名人・有楽亭八雲の元。「八雲師匠はお弟子さんはいっさい取ってらっしゃいません」と言われる通り、弟子を一切取らないはずの八雲が何故か与太郎を気に入ったのか、気が変わったのか与太郎を弟子にする事から物語はスタート。

評判通りの面白さで、落語にまるで興味もなかった私も落語って面白そうと思ってしまったものです。そもそもマイナー競技やマイナー文化にスポットを当てる場合は、大抵の人はその文化をまったく知らないものです。落語なんて今の若者はほとんど知らないでしょう。この手の作品はいかにしてそれが凄そうとかか興味持たせるかがキモなんですけど「落語心中」はそれがズバ抜けて上手い。

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落語描写が凄い

僕は落語をまったく知らないのですが、思わず落語ってこんなに凄いのかと息をのみ込んだものです。そしてそのうち落語を聞いてみたいと思ってしまうというもの。興味のなかった文化を凄そうと思わせ、落語を聞いてみたいと思わせるのが「落語心中」の素晴らしさよ。

当然、落語を題材にしつつもキャラの掛け合いや心理描写やストーリーも惹きつけられて面白いのは言うまでもありません。それでも僕の心の琴線に落語描写が響きまくる。以前に説明した音楽漫画同様に落語がいかに凄いかの描写の仕方が絶妙すぎる。

落語なんて言葉で語るだけで凄いか凄くないかを漫画で表現するのがいかに難しい事か。それを明確に「凄い落語」と「凄くない落語」を描き分けているのが「落語心中」の素晴らしさよ。主に観客の反応で落語の良し悪しを分けていますけど、八雲師匠と与太郎の落語描写を比べれば、一目瞭然です。

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与太郎の落語

あえて下手くそ風に描いているのも勿論ですけど、与太郎の落語描写は主軸を落語シーンに置いてないかな、と。1ページの中に落語してるシーンがあるって感じ。対して八雲師匠の落語描写は台詞のみの落語シーンだけにスポットを当てており、落語を聞いてる他のキャラの感想も途中で入るものの、主軸は本当に落語シーンをメインで描いており、思わず見入るならぬ聞き入るってもの。

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八雲師匠の落語

かたずを飲んで見守る程の落語シーン。

また、1巻の圧倒的面白さに比べると、2巻は八雲師匠の過去編がメインとなっており、勢いはちょっと落ちてるかも。それでも、この過去編によって物語は深みを増すし、何よりも2巻を読んだ上で1巻を読み返すと一層味が沁みるんですよ!

1話冒頭で与太郎を弟子に取った八雲。
なんで八雲は今まで弟子を取らなかったのに、なんでいきなり態度を変えて与太郎を弟子にしたのかと疑問に残っていました。

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弟子を取った

お前さん、帰るトコロがないのかえ?

八雲は後に与太郎の落語を「あの寄席の空気みたいなもんが助六と同じだった」と語るなど、与太郎に亡き親友・助六の面影を見ていました。そして助六と約束して果たせなかった「二人で落語の生き延びる道を作ろう」とか胸熱な約束を交わしちゃったり。

どうも八雲師匠は亡き助六を与太郎に見ているようなんですけど、それは与太郎を拾った後の事で、「アタシもなんであんなの拾っちまったのかと思ってた」とか言っちゃってました。過去編を読んでビックリしたのは助六も八雲師匠も同じ境遇で帰るところがない放り出された人間でした。

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捨てられた

お前さんも捨てられたんだろ。なにがあったかわからねェけど、辛ぇよなあ、この年で一人放り出されるなんてな…

与太郎を拾った時の「お前さん、帰るトコロがないのかえ?」という台詞がすげぇ意味深で味があるってもの。帰るところがない放り出された者として、同じ境遇でデジャブってたんだろうか。何にしても過去編はまだまだ続くようで続きが本当に楽しみですね。物語の構成もキャラの立ちっぷりも読み返したいと思える濃さもあってマーベラスってもの。

昭和元禄落語心中(2) (KCx(ITAN))
雲田 はるこ
講談社 (2012-01-06)

昭和元禄落語心中(1) (KCx ITAN)
雲田 はるこ
講談社 (2011-07-07)