未必の恋 箱舟の行方 (ジェッツコミックス)

先日シギサワカヤ先生の新作「未然の恋」が発売されました。
「楽園」で連載していた作品ですが、元は短編集「箱舟の行方」の表題作の続編的なもの。「箱舟の行方」は、寿退社が決まっている倉田と妻子持ちの笹原が惹かれあって近づき、そして最終出社日にハプニングでまた縮まる…というもの。

エレベータの中でドロドロ的な。ぶっちゃけ不倫。
惹かれるけど、社会的な立場もあるし、お互い守るものもあるし、だから苦しい。読めば心が抉られるような気持ちになり、タイトル通り行方は分からなかったわけですよ。箱舟という名の不倫関係の2人は惹かれあうけど、気持ちに任せたままの行動など出来ない。どこにも辿りつかなかったという。箱舟から出なきゃいけないけど出れない、行方は分からない。

シギサワカヤ先生の作品って心を抉るドキツイ感じで、電車とかで軽く読むというより家でどっしり構えてじっくり読むのが僕のジャスティス。重い系で密度が濃いんで、読む時には精神力を削られるんですけど、それが魅力でめちゃんこ面白いんですね。

ジェットコースターのように感情が上下するグッときます。ウヴァーとなるんですよ。あと、個人的には結末をぼやかすというか描かない的なところも良いわけです。「さよならさよなら、またあした」とかまさにその最もたるものでしょうか。


凄く「生きる」って事を考えさせてくれるわけです。まさに心をえぐる良作。余命宣告された女子高生・育と担任だった教師が唐突に結婚し、複数のキャラの視点で描かれる群青劇。世界は追わないし育は今日も生きてる。生まれながら余命20年と言われ、世界の中心系でもなく弱々しいわけでも今日を全力で生きる育が胸熱でした。ラストは鬼気迫るものがあり、鳥肌が立とはまさにこのこと。明日も生きようと思わせられるってものです。

個人的にキモは結末。
やっぱりぼやかすというかどっちとも取れるわけで想像次第。心をえぐられまくる中で未来の「未確定」さ。この未確定さが僕は好きなわけですよ。想像する余地がある的な。

で、「箱舟の行方」では箱舟はどこに行くのか分からなかったんですけど、その続編と言うか「箱舟の行方」の視点を変え、"それまで"と"それから"を描いたのが「未必の恋」。

未必の恋
未必の恋
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シギサワ カヤ
白泉社

倉田と笹原がはじまるまでとその後を描いた作品。まさか続編が読めるなんて。もちろん「箱舟の行方」を呼んでなくてもまったく問題ない仕様です。相変わらず心をえぐられるような切なさ全開なのがヤバイ。不倫という罪深さを存分に描き、切なさとか罪深さが心をえぐってきやがります。

やっぱりシギサワカヤ作品の最大のキモはドロドロな泥沼をひたすら走るけど、ちょっと振り返るとウワーってなっちゃう系をサラッと描いちゃう事ですよ!何を言ってるか分からねーと思うが、俺の語彙じゃ説明できん

そんなわけで、「未必の恋」の惹かれるんだけど罪を背負う感じが非常に僕の精神力をゴッソリと削っていくんですよ。不倫を始めるまでから「結末」までを描いています。ある意味では最も読みたっかたもので、パンドラの箱的なものですよ。

シギサワ作品の未確定さが好きでしたが、結末を最後まで描いたのはビックリ。やっぱり痛くて切なくてウヴァーとなってしまいます。箱舟の行方の辿りついた先は予想通りっちゃ予想通りだけど、者悲しさ全開でグッときます。ラストの倉田の笑顔が全てを物語ってる。笑顔と涙。読むと精神力をゴッソリ削られるけど、やっぱり凄いわ。どうしようもないけど、もどかしいけど、凄く人間臭さが魅力的ですね。

未必の恋
未必の恋
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シギサワ カヤ
白泉社