今一番漫画界で流行ってるものってなんでしょうか?
ぶっちゃけ「織田信長」だと思うの。信長の芸術や食にスポットを当てたものから、DNAを受け継いでいたり、タイムスリップしたり、ギャグ漫画になるわ、異世界で戦うわ、本格的に織田信長にスポットを当てるのを筆頭に、その数は半端ない。

センゴク天正記(1) (ヤングマガジンコミックス) いくさの子~織田三郎信長伝 1 (ゼノンコミックス) 信長のシェフ 1 (芳文社コミックス)
ノブナガン(1) (アース・スターコミックス) 信長の忍び 1 (ジェッツコミックス) ドリフターズ 2巻 (ヤングキングコミックス)

僕が補足しきれてないだけでもっとあると思う。
主役&準主役級の活躍をするものばりですよ。さらにもう終わったけど「戦国八咫烏」とか速攻で打ち切られたが「戦国ARMORS」。ついでに「へうげもの」「雷神孫市」なんかも加えてもいいかもしれない。とにかく織田信長を題材にした漫画は多い。ちゃんと統計を取ったわけではないですけど、織田信長は今漫画界隈で最も流行っているんじゃないかと思うわけです。

そんなわけで「信長協奏曲」である。
露骨な猛プッシュぶりに最初は若干「え?」と戸惑っていた気もしていたんですけど、確かに面白い。先日6巻が発売されました。

信長協奏曲 6 (ゲッサン少年サンデーコミックス) 信長協奏曲 5 (ゲッサン少年サンデーコミックス) 信長協奏曲 1 (ゲッサン少年サンデーコミックス)

日本の歴史になんの興味もない高校生のサブローが、ある日突然、戦国時代にタイムスリップしてしまう。そこで出会った織田信長は、病弱で顔はサブローそっくり。その信長に言われるのである。「わしの身代わりになれ。」と。

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わしの身代りになれ

こうして、身体の弱い織田信長の代わりに織田信長として生きて行く事になったサブロー。ぶっちゃければ、「戦国自衛隊」以降に続くタイムスリップして戦国時代へという何番禅師ものやねんという漫画である。はいはいタイムスリップねと最初は酷くガッカリしてしまったのも事実。でも凄く面白い。めがっさ物語にのめり込む。これもまた独自解釈で織田信長を描き、これが僕の心の琴線に触れる。

そもそもサブローはバカで学校の勉強も出来ず、日本の歴史を全然知らないのである。戦国時代にタイムスリップして歴史を知ってるからこそこの時代を上手に立ち振る舞うという事がない。それじゃタイムスリップした意味ねーじゃんという気もするけど、等身大の高校生が織田信長になって戦国時代を生き抜くのである。

はっきり言ってサブローはアホである
アホであるが故に、大うつけものと呼ばれた織田信長に妙にマッチしてしまう。何も考えてない言動によって回りが勝手に器が大きいと勘違いする様が実に壮快なのです。例えば柴田勝家ののやり取り。

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勝家

「―ま、まるで自分が天下をとることが天命であるかのような言い方を!」
「…本気で自分が歴史を変える程の存在だと…!?本気でそう思っておるのか―この男は…!?」

と、勝手に信長の器の大きさを察知する
当のサブローは歴史をまったく知らず「信長って天下を取った人だっけ?」という知識で、じゃあ俺が天下取らないと歴史が変わっちゃうねという発言をして、後は勝手に回りが信長は器が大きい、大望を抱いていると勘違いするのである。

こうして、信長は天下を見ていると器が大きいと勘違いして勝家は信勝の謀反計画を密告するに至る。最初は恒興が「うつけは仮の姿、心中で天下を取るなどと」と一生の忠誠を誓うのに始まり、回りの家臣は次々と信長の器の大きいと勘違いして惹かれていくのです。はっきり言ってアホである

とはいえ、ただのアホのサブローの言動で回りが勘違いして織田信長は凄い男だとなるだけでなく、何も考えてないが故に本当に器の大きさを見せつけるのも外せません。

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本当に器の大きさを見せる

何も考えていない適当な発言で周りが信長凄いとなるだけでなく、室町幕府13第将軍足利義輝を前に堂々と言い放ち本当に器の大きさを見せつけるのも外せません。まだ尾張という小国の大名なのに、マジで天下統一を見ている節は初期からあったのである。

また、「信長協奏曲」は戦国時代最大の魅せ場である合戦をほとんど描かない。作者が描けないのかも知れないけど。信長といえば「桶狭間の戦い」は、信長を題材にした漫画では最大の盛り上がり所として描かれるものです。例えば「センゴク」など、わざわざ番外編にして「桶狭間戦記」と銘打って信長&義元の双方にスポットを当てて、両者の幼少時代からの生き様から両国の住人から経済まで事細かに描き、歴史上の最大の山場であるという盛り上がりを見せてくれました。
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「信長協奏曲」は目指すは今川義元、天も味方してる…と桶狭間の戦いそのものをまったく描かず運が良かっただけで後日談のように終わり勝ってしまいました。今川義元など1コマも描かれる事無く桶狭間の戦いが終了。

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桶狭間の戦い勝利

1コマを描かずに桶狭間の戦いに勝ってしまった…。
合戦の後にサブローが「桶狭間ではなくて田楽狭間だったな」とか呟くなど、桶狭間の戦いをサクッと簡単に描く一方で、キャラは相当掘り下げている。

とにかくキャラが立ちまくっている
主人公の織田信長(サブロー)を筆頭に、秀吉も明智も家康もそうきたかと唸るぐらいのキャラの配置っぷりです。このキャラ配置でどうやって本能寺の変が描かれるのかとワクワクが止まらない。個人的には妹・お市の方がお気に入り。幼少期の兄にベッタリなところから、浅井家に嫁ぐまでお市の方の心情を詳しく掘り下げれ描かれている。

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おいっちゃん嫁ぐ

歴上の重要事件よりもキャラにスポットを当てているのが「信長協奏曲」の特徴です。お市の方にしても初期から登場しており、浅井家に嫁ぐまでの葛藤などを詳しく描くのである。故に、6巻に至るまでがクソ面白くなるのである。いわゆる「第一次織田信長包囲網」である。

織田軍VS浅井・朝倉連合軍。
お市の方にスポットを当てたからこそ、浅井家に嫁いだお市の方とそれと敵対することになる織田軍がかなりの尺で描かれている。織田包囲網をこれでもかという感じで詳細に描く。キャラにスポットを当てたからこそですけど、これがクソ面白いんです。6巻ではいわゆる「姉川の戦い」が開戦する。

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姉川の戦い始まる

「桶狭間の戦い」をほとんど描かず、「姉川の戦い」をそれに至るまでの経緯と共に詳しくかなりの尺で描く。普通、尺の使い方が逆だろと思うも、キャラにスポットを当ててるからこそ、逆にこれが面白く感情移入してしまうのです。織田との同盟を破る様子、浅井親子の関係、織田信長を敵と決める葛藤、お市に謝るシーンなど、凄く人間臭いのが良い。6巻ラストの浅井などそこらのダメ親父がどうにもならない事を前にして、それでも足掻く、立ち向かうようでグッとくる。

初期からお市を描いたからこそ、嫁ぎ先の浅井家との戦いがめちゃくちゃ盛り上がっている。おそらく「小谷城の戦い」まで事細かに浅井家とお市にスポットを当てて描かれると思いますが、今まで殆ど合戦を描かなかったのも相まって、ここが一つのターニングポントですよと言わんばかりの熱さがビンビン伝わってくる。

サブローにしても今までは、ほほんと、のらりくらりと戦国時代を生きてきた感じでしたが、ようやく戦国武将らしい決意とか覚悟ってのが芽生えました。「信長って天下を取った人だっけ?」という知識で天下取ると言ってハッタリ的に家臣達の心を掴んできたわけですが、姉川の戦いの前では逆に家臣達の気迫を感じ取り、もはや天下を取るまで後戻り出来ないと気づく。

現代人らしくちょっと戦にボヤケば、家臣たちはそんな事言われたら困る、弱音を吐くなど信長らしくない、とサブローを叱咤する。驚くサブローに対して家臣たちは次々と言い放つ。「殿のその揺るぎない自信と、自身通りの成果に魅せられ、我らはずっと殿について参ったのです!!」「我らはもう、あとには引けませぬ」「ここまで止まれば織田家は潰されまする、止まるわけにはゆかぬ!」「走り続けねば、天下などとれませぬぞ…!」…それは本気の覚悟と決意!

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家臣たちの覚悟を感じ

サブローがアホな知識で言っていた「天下をとる!」。もはや家臣達はマジである。天下取るしかねーよ。家臣たちの本気を感じ取り、サブローも本気の覚悟で堂々と言い放つ。

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サブロー

―浅井と戦って勝つ。俺は天下を取らなきゃいけないからね」。

ようやく出来たぜ…ダンコたる決意ってやつが!
「天下取らなきゃ」という台詞。信長って天下取った人だっけ?じゃあ俺が天下取らないと…などという軽い言葉でなく、本気で自分の言葉で意志で俺が天下取ると言っている。高校生だった、現代人だったサブローが確かに戦国武将になった瞬間だと思うの。胸熱!