「鬼灯さん家のアネキ」の五十嵐藍先生の短編集「ローファイ・アフタースクール」が発売されました。まさに、帯にある通り「珠玉の短編集」です。収録されているのは「ガールフレンドインザスカイ」「暗黒さん」「神様ごっこ」「ダウンタウントレイン」「はるまげ。」「ekstasis」「アオ」「アフタースクールショウ」の全8本。数ページのものから数十ページのものまで様々。

ニヤニヤするラブコメからギャグもありますが、キモは「鬼灯さん家のアネキ」でたまにあった胸がザワザワするような思春期特有の黒さをピックアップした感じ。盗んだバイクで走り出したい衝動。つまるところ感情が揺さぶられる系統です。どの作品もテーマやキーワードがあるもローテンションで進むのが面白いです。

お気に入りは「神様ごっこ」かな。ダウナーな青臭い感じが大好きです。
ある少年が無気力で気怠い日常を過ごしていたら、丘の上に立つ灯台で1人の少女と出会う。終末を信じて街を覗き交流していくもの。

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神様ごっこ

この世界が終るのを待ってる遊び。
いわゆる若者特有の閉塞感とか鬱屈した感情を描いたものです。この短編の後書きで「特に大きな波もなく淡々としてて、結局何も起こらなかったような話」と書かれていたけど、少年には何か起こったと思う。

自分には何も無い、どうしたらいいか分からない少年が少女と出会い交流して何も無いが何か有るに変わるのです。最初は、「世界が終わるか…手っ取り早くていいな」と思ってたのに「明日で終わり…?」「終わりたくないのかもしれない」「終わりたくないなぁ」と変化していく。どうでもいい何もない世界が終わって欲しくないって思うようになる。感情変わっていくのが上手い。

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楽しかった

「楽しかった」と。
特に特別な事をしたわけでもなく1週間過ごして楽しかったと思う2人。だから世界が終わって欲しくないと思うようになる様子が淡々と進む中でもグッときます。田原さん風に言えば世界が終るの「ちょ、ちょーとまって!」です。

少女と出会う前は「自分には何も無い」が、少女と出会って別れて「何も無くなった」と過去形になってる。少女と過ごした1週間は「何か手に入れた」んだなって。

あと、この少女がまさに神様

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少女

暗闇に光を、なんてなんとも神様らしいじゃないか
この言葉通り。灯台で光を出して少年を導き、街中に光を照らす中で、少女自身が文字通り精神的に暗闇の中にいた少年の光だったなって。「神様ごっこ」は何度も読す度にいいなと思います。

また、「ekstasis」なんか最高すぎるだろ。
クラスで寝てる黒髪ロング少女の髪を舐め回す話。
たった5ページのショートショートで台詞一切無しだけど夢と希望が詰まってました。最初は髪の毛触ってるだけだったのが、段々エスカレートして本当に黒髪ロングペロペロ(^ω^)するのである。

何が素晴らしいって、黒髪ロング少女が起きてたこと。

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黒髪少女

なんすかこの表情!
ヨダレ付けてペロペロされたのに、こんな恍惚とした表情されたら僕のハートは「ズッキューン」って打ち抜かれてしまいますよ。最後のコマで僕は悶絶しました。これは素晴らしい!

全体的に怠惰な青春送ってる少年少女の痛さやもやもやっとした話が多いもののギャグやラブコメの作品も楽しめました。うん、これは良い短編集だ。ちょっとドライでもちょっと温かくてちょっと不思議。
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鬼灯さん家のアネキ (4) (角川コミックス・エース・エクストラ 22-4)
五十嵐 藍
角川書店(角川グループパブリッシング) (2011-12-02)

鬼灯さん家のアネキ (2) (角川コミックス・エース・エクストラ 22-2)
五十嵐 藍
角川書店(角川グループパブリッシング)

鬼灯さん家のアネキ (1) (角川コミックス・エース・エクストラ 22-1)
五十嵐 藍
角川書店(角川グループパブリッシング)