センゴク一統記(7) (ヤングマガジンコミックス)

明智十兵衛光秀散る。
「センゴク一統記」7巻が発売されました。山崎の合戦の決着が描かれ、"殺し間"を掻い潜って見事に秀吉が勝利。まあやられたね。「センゴク」シリーズで描かれた明智光秀に。信長より衝撃だったかな。何とも言えない感慨深さと悲壮感ですよ。この山崎の合戦でアプローチされたのはズバリ「民」「国民」である。

そも、「センゴク」で描かれた明智はとにかく半端ではなかった。で、「センゴク」では本能寺の変に至るプロセスは他にはなく、俗にいう「不仲説」を一切否定して、要約すれば上様マジ俺の神だから殺しますっつー感じで本能寺の変を起こしたわけです。もちろん唐攻めを防ぐというのもあったけど。その後の明智の国の治める理想論よ

「民の声を惣村が代弁、惣村の声を惣奘が代弁し、惣奘の声を惣郷が代弁し、下から上へ政の地歩を固める他ない」

どんな国作るのかと聞かれて「下が天となり天が下なる政に候い」とか言いだしちゃったのである。おいおい民主主義を唱えちゃったよと僕はビックリ仰天したで候。まあ、「センゴク」の魅力は宮下先生の独自の解釈が面白いわけですけど、まさか明智が民主主義をねぇと「ファッ!?」状態。でも、考えようによってはこれこそ最大の下剋上なのかもしれません。んで、民主主義的な構想を打ち出す明智は合戦中も民に心の中で語るわけ。

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明智光秀

「魍魎らよ目覚めよ」「眠れる民よ~目覚め給う」「支配から解き放たれよ」と、民衆に目覚めろ、支配から解き放たれろ、民衆が政をするのだ、という自らの構想を語る。しかし、悲しいかな、民衆は濁流となって明智勢に襲い掛かる。民の為にと考えた明智が逆に民にやられる。因果である。明智といえば初登場キャッチコピーが「最も哀しき男」というものでしたが、まさにそのキャッチコピー通りになってしまった。

また、秀吉側からの明智の語りかけも面白かったですね。
秀吉は、山崎の合戦で統べていたはずの秀吉も制御不能になっており、以下のように明智の心情を述べていた。

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羽柴秀吉

明智―ワシに任せい
"民"なる織田信長以上の魔物を手懐けられるのはワシ以外におらんのじゃ

さきの合戦で全然手懐けられてなかったくせに…というのは今後の伏線でしょう。んで、秀吉の台詞は要約しちゃえば、民というものはバカだから明智の唱える「民の成熟」など夢物語である見守るべきだ、と。そういえば、僕が最高傑作のゲームと思う「タクティクス・オウガ」でも黒白ランスロット同じようなやり取りをしていた。民はバカだから力で支配される事を望む、外から不平不満を言うだけである、と。民は支配される「特権」があるとかなんとか。僕は黒ランスの言う通りだと思うね。

話を戻そう。山崎の合戦での敗北した明智。
もはや死すだけの明智が隋風と最後に語り合ったやり取りがなかなかどうして。色々と考えさせてくれます。民が成長して次の段階の社会、民主主義的な政治を構築したかった明智。しかし隋風はまだこの国の民はそこまで成熟してない、生かさず殺す統べるしかない、と。で、明智はそんな未成熟な民を統べるなら秀吉がお似合いだと言うわけです。

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「なるほど、然らば羽柴が統べるに相応しい」

今回の山崎の合戦は、民主主義という300年以上も早かった構想を打ち出した明智と、まだ未成熟な子供の国民を束ねるのは秀吉が似合う。民はそこまで成熟してないから時代が早すぎた残念斬り!この時代では明智を選ばなかった。という感じで描かれていたわけである。それが宮本先生の描く意図であろう(多分)。

だがしかーし!
俺はあえて言おう!この時代こそ明智が必要だった、と。
「羽柴が統べるに相応しい」だって?逆だよ、逆。明智が統べるに相応しい「民」なんだと俺は主張したい。日本では江戸時代から識字率が跳ね上がり誰もが文字を読めるようになったと言われている。つまり、「センゴク」の時代は民衆は大多数が文字も読めない、当然民度もアレ。現代でも民主化して大混乱してる国は数多。ぶっちゃけ、民度が低い民が民主政治などしても百害あって一利無しなんだよね。無能が民主政治、衆愚政治やるよりも必要なのは有能な独裁者だと思うわけ。少なくともこの時代ではね。

故に、どう考えても「センゴク」で描かれた明智光秀は優秀な独裁者になれたと思うので、実に惜しいと感じますね。この時代の民に必要だったのは有能な独裁者であり、「センゴク」で描かれた明智はその器があった。日ノ本、日本を導く器有りですよ!民主主義構想とか最初から取り違えてるで候。

実に残念です。もったいない。史実抜きに漫画「センゴク」だけでいえば、最も良い政治しそうなだけに惜しい人物を亡くしたね。明智よさらば。そういえば死に際に天海出てきて、「源義経=チンギスハーン」によろしく「明智光秀=天海」が炸裂するのかと思ったけど、そんな風にもならなかったけど、天海の登場はどういう意味なんでしょうか。

なんにしても壮絶にかっこよく散ったね。「センゴク」は今川義元もそうなんだけど、一般的にあまり良い印象を持たれてない武将をめがっさかっこよく描くからたまりません。明智光秀…最高のキャラであった。合唱!

んで、今度は政治戦略へ。
織田信長を超えようとする秀吉。一統、その先の日ノ本へ動く。
今後は、清洲会議…そして羽柴VS柴田の賤ヶ岳の戦いへと続くのであろう。今後、天下を治めるには「織田」の名前が欲しい。柴田がお市、羽柴が茶々を貰うという展開である。で、「センゴク」では秀吉が茶々を見て…。

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秀吉が茶々を見て

美しいのう。是非に於次丸(むすこ)の嫁に

と述べるわけ。
違和感を感じたのは僕だけではないでしょう。だって豊臣秀吉っつったらねぇ。「センゴク」風のキャッチコピーで言えば、「史上無比の女好きにして最もロリコンな男」である。ホモショタが当然の時代で少女だけを求めた真正ロリの鏡ですし。おすし。

義理の息子・於次丸(羽柴秀勝)の嫁ねぇ。まあ、於次丸は病死ちゃうし、茶々は秀吉の側室になるのは歴史的事実なのでその辺りをどう描くか楽しみですね。なんかラブコメ展開が始まる臭いがプンプンしてくるんですけど。明らかに親の仇で秀吉を毛嫌いしてる茶々は陥落ちちゃうのだろうか。しかし浅井三姉妹めがっさ可愛いのう。余裕でブヒれる。