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「魔法使いの嫁」、ごめんよ、まだ僕には帰れる所があるんだ。こんな嬉しいことはない。
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2014年05月11日
天邪鬼なので各所で話題になった作品は見向きもしない性格なんですけど、「人外×少女」という帯と「これは、世界の美しさを識る為の物語」というキャッチコピーに釣られて読んでみたところ、これが素晴らしかったわけであります。
羽鳥チセ15歳。
身よりも、生きる希望も、術も何一つ持たぬ彼女を金で買ったのは、悠久の時と寄添うヒト為らざる魔法使いだった―。彼に『弟子』として、そして『花嫁』として招き入れられた時、少女の中で停まっていた針がゆっくりと動き始めてゆく…。
身よりも、生きる希望も、術も何一つ持たぬ彼女を金で買ったのは、悠久の時と寄添うヒト為らざる魔法使いだった―。彼に『弟子』として、そして『花嫁』として招き入れられた時、少女の中で停まっていた針がゆっくりと動き始めてゆく…。
1巻表紙裏より。
今ならコミックブレイド公式サイトで1話が無料で読めますのでまずは読んでみてください。1話からもうもう本当に素晴らしいというものであります。
<まずは1話を読むべし>
・マッグガーデンオンライン「魔法使いの嫁」
主人公は日本人の少女チセ15歳。
身よりもなく親戚中をたらい回しにされた末に、オークションで売られてしまいます。チセを買ったのガイコツの化け物の魔法使い(エリアス・エイズワーン)。のっけからデンジャラスな始まりですけど、そこまで雰囲気が暗くならないのは途中途中のギャグや2人のやり取りが微笑ましいからでしょうか。
微笑ましいやり取り
エイズワーンとチセのやり取りがね。いいんだ。
チセは魔法使いの才能があるようで、小さい時から普通の人が見えない「モノ」が見えちゃうようで、そのせいか気味悪がられて壮絶な過去がトラウマのようになっています。親戚からも、誰からも、「お前なんかいらない」と言われて成長してきました。故に、チセか「帰れる場所」を求めてしまい、エイズワーンの家が求めていたものになりそう…というのが1話である。
まあ、何をおいてもチセの可愛さ。これに尽きるでしょう。
1話で、探し求めていた「帰れる場所」というものを見つけたチセが、エイズワーンに「帰ろう、僕らの家に」と言われた時の表情の素晴らしさは至高の一品といえるわけです。
素晴らしき表情よ
1巻で唯一見せた表情なり。笑顔である。
過去のトラウマのせいか、死んだ魚のような目で無表情系美少女のチセがお風呂で赤面して、「帰る場所」があったと気付いて見せた笑顔は私の心の琴線を鷲掴みにしやがりますね。ギャップ萌えの神髄がここにあります。
つまるところ「魔法使いの嫁」は心を無くしたチセがエイズワーンと過ごすようになって、「温かさ」というものを知るようになるほっこり系である。また「うさぎドロップ」や「マイフレンド」や「高杉さん家のおべんとう」などに通じる父娘系の温かさ溢れる物語である。ファンタジー満載ですけど。
<関連記事>
・血の繋がらないおっさんと少女は胸熱
とはいえタイトル「魔法使いの嫁」ですしね。
父娘ものに近い印象ですけど、ラブがコメる可能性は十分にあるわけで。もちろん、それはそれで一向に構わんわけです。むしろ望むところだ!1巻終盤では、チセとエイズワーンの間に確かな「絆」のようなものが出来ていると感じます。
絆が出来ているようです
素晴らしいです。実に素晴らしいですね。
この絆が親子なのか男女(?)によるものなのかは分かりませんけど、段々と築かれる2人の関係はなかなのものでした。チセもチセで「意外と彼は目でものを言うタイプらしい」と、よく観察してるし心の中で「彼」とか言っちゃうわけです。見事にツボを押さえている。
つまり「魔法使いの嫁」は読んでホッコリ、チセの可愛さにニッコリする良いものでありました。
でだ。僕が「魔法使いの嫁」を読んで引っ掛かったのは「空」である。
1巻で一番良かったエピソードは3話「The Balance distinguishes not between gold and lead」である。まさに「空」の話。
空
どうもチセの母親は目の前で死んでしまったようで、漫画で描かれている感じだと屋上から投身自殺したかのような印象を受ける。もちろん、それがギミックの可能性もあるのでなんとも言えんが、少なくとも「母親の死」と「空」は綿密に関係ありそう。ドラゴンにも「生きるものが死者を羨まむものじゃない」「飛べない君が飛ばなくて良かった」と言われていました。
で、チセは空に対して憧れのようなものを持っているのではないかと思わせる描写があったりするわけで。1話でエイズワーンの家にワープした時も屋敷など目もくれずに空だけを見ていた(ように見える)。3話でも空を見ているチセはクローズアップされていました。
「空」といえば物語では大体自由や解放の象徴だったりします。空を自由に飛びたいな、はい、タケコプターである。地下の牢獄などに閉じ込められた囚人、塔やお城に監禁されているお姫様は、空を見たり飛んでる小鳥を見て「自由」「開放」を連想するのがお決まりである。自由や解放の反対は不自由、束縛。んで、チセも過去に囚われている女の子なのである。そんな彼女が空を飛んだのである。
空を飛びました
エイズワーン同様にチセも目でものを言うタイプで、空を飛んだ時の目はなかなかどうして。感動している、喜びに満ちてる瞳であります。
3話「The Balance distinguishes not between gold and lead」は、束縛された女の子が自由や解放の象徴である「空」を飛ぶってエピソードである(まあ実際に飛んだわけではないけど)。お決まりのパターンならば、これで完結。過去に囚われていたチセは空を飛びました。束縛からの自由&解放のメタファーでめでたしめでたしとなる。チセも空飛んでを「何か」から開放されている(ように見える)。
何かから解放された(ような)描写
この流れが素晴らしいの一言。
一体何から解放されたのか。サブタイトルが「The Balance distinguishes not between gold and lead(天びんは金も鉛も区別しない)」ですからね。「人は平等」という意味合いなんですけど、「生きる」「死ぬ」はみんな同じだよんって事でしょうけど。何よりも空飛ぶことを「生きる」と表現してるのがなかなかどうしてよ。おそらくチセの中では空は死のイメージだったんだろうけど、生きるイメージに変わったのではないかな、と。
んで「魔法使いの嫁」のキモは3話から4話のチセの変化にあります。
3話のチセ→4話のチセ
分かります?
チセはドラゴンの巣から出たら直ぐに眠ってしまった。起きたの列車の中である。着ている服は同じなのですが、3話で履いていた黒タイツが4話で目覚めると生足となっていた。つまりそういうことだ。
魔法使いの嫁(1) 著作:ヤマザキコレ 少女を金で買ったのは、ヒト為らざる魔法使い――……。羽鳥チセ15歳。身寄りもなく、生きる希望も術も持たぬ彼女を金で買ったのは、ヒト為らざる魔法使いだった…。新進気鋭の作家が描く、英国を舞台にした異類婚姻幻想譚が堂々、開演! |