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    「鉄風」が燃える

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    アフタのおまけ、四季賞の冊子は家宝です。

    死刑制度が廃止された世界で、懲役300年など、人間の寿命を遥かに超える懲役年数が言い渡される法律。そこでは、罪を追った本人が死んでしまったら、クローン人間が変わって懲役年数を受け継ぎました。クローンと言っても、記憶や性格などは受け継いでいるわけでなく、遺伝子が同じというだけ。クローン人間の主人公は、オリジナルが犯した罪を償いながら葛藤するという、グンバツな設定で考えさせられた「囚われクローン」。

    四季大賞を取った「魔女が飛んだり飛ばなかったり」も逸材。世界に13人の魔女がおり、世界を守って来た魔女だけど、一般の人間からは排除されている感じ。そんな魔女たちに、地球に衝突する隕石から、自分の命と引き換えに世界を守るという最後の任務が。魔女の一人ナツオ様とあくまで一般人の主人公の関係が最高にマーベラスでした。どう考えてもニトロプラスの「スマガ」はこの漫画の影響受けたよな。

    さらにアフタ本誌に掲載された読み切り「都市伝説だよ都市子さん」も素晴らしい。と、ハイクオリティーの話を連発させまくりの太田モアレ先生が、初の連載もの「鉄風」の単行本が出ました!1、2巻同時発売です!


    総合格闘技をテーマにしているというのですから、たまりません。総合の漫画といえば、修斗を扱った「オールラウンダー廻(AA)」もお勧めですが、この「鉄風」は脳から変な汁が出てくるほどの面白さ。読んでて鳥肌立った!オビもテンション上がりまくるです。


    新・本格格闘技漫画!!!!


    なにが「新」なのでしょうか。女子高生の格闘技漫画というのは新しいっちゃ新しいですが。

    ちなみに、作者、太田モアレ先生は「昔ながらの熱血少年漫画のノリを目指して描きました」とコメント。なるほど、総合格闘技が大好きで、「リンジィと、リング上で闘いたい…」と親友と戦いたいがために、学校で部活を作ろうとし、実力も十分で楽しそうに総合格闘技に取り組む熱血バカ。うん、一直線の青春っぷりが、昔ながらの古き良き少年漫画のノリですね。

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    ↑主人公

    …ん。
    熱血一直線の天才、ゆず子。それを、倒してやろうとするライバルキャラ…、って主人公こっち?どう考えてもライバルキャラとしてキャラが立ちまくっている石堂夏央が主人公。「私は充実している人間を、許さない」とかナチュラルに黒いです。

    この黒さが際立ったのは、空手部へのかち込み。夏央は昔、空手をやっていたようで、過去の勘を取り戻す為に、空手部の主将(彼女とも因縁がありそう)を踏み台にしようと道場破りのようなことをしますが、あいにくの不在で、他の部員を「見た感じ他は論外かな…」と満面の笑顔で見下したり。すんごい黒いよ!どう見ても悪役としてキャラ立ちまくりです。本当にありがとうございました。このような悪役をプロレス用語ではヒールというのですが、彼女はヒール役がはまりすぎ

    また、ヒールに対して善玉をベビーフェイスといいます。プロレスならば、ベビーフェイスがヒールへ挑む姿に感情移入して、手に汗握るもの。が、「鉄風」は極悪ヒールがベビーフェイスにまったく歯が立ちません。で、潰しがいがある事を確認し、強大な相手へ挑戦する事を決心するのでした。

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    挑戦

    極悪ヒールが善玉ベビーフェイスに挑戦する!…なるほど「新」というだけあって新しいな、おい。で、これに感情移入できるかどうかは分かりませんが、展開的にはすんごく燃える

    試合に至る流れまでに、あらかじめ段取りや筋書きが決まっていて、リング外で注目を集めようとする事を、プロレス用語でアングルといいます。このアングルというのは、格闘技の世界でも存在し、「鉄風」は、このアングルまで描くのです。格闘漫画でアングルを描くなんて、新しいな。女子格闘技のトーナメントが開かれることがテレビで中継され。

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    女子高生に男の格闘家が失神KO

    去年引退した竹中理祐が、女子高生リンジィとのスパーリングで失神されるシーンが流れます。夏央は、ものの見事にアングルに乗せられて、ブルッと震えてしばらくテレビを睨みつけていました。世界最強の格闘家の娘が実力のある男格闘家を瞬殺。話題性十分です。そして失神された格闘家の弟子が、そのトーナメントへ出場を発表。ここまでは筋書き通り。

    アングルであったと語られるのに、竹中選手が実は骨折していたという、リアルでは考えられないハッタリも最高ですよおお。つき抜けも大事である、と。「キン肉マン」のゆでたまご先生は、格闘表現を以下のようにおしゃっていました。

    格闘マンガをもっと究めようと思ってます。絶対に、この分野では負けたくない。プロレスラーとか格闘家にも、ゆでたまごはすごいことを考えるな、と思ってもらえるようなものを描いていきたいです。だからといって、ただリアルに描くだけではダメなんですよ。「キン肉マン」に、プロのファンが多いのは、そこなんだと思う。僕らの描くものは、つき抜けてますから(笑)

    つき抜けも重要である、と。

    また、人によっては、やらせ感満載のアングルを嫌う人もいます。ボクシングの亀田兄弟なんて完璧TBSが描いたアングルです。逆に、アングルと分かっていても、あえて乗って楽しむというのも人それぞれ。

    で、話題を提供して注目させるようにするアングルの中にもガチのものが存在します。これをナチュラルアングルというのですが、「鉄風」はやらせのアングルに乗っかりながら、いつの間にかナチュラルアングルと化していく様が最高に燃える。

    トーナメントに参戦を表明した紺谷が、アングルに乗っかりながらも、「ヤラセだろうが、なんだろうが、あの子は竹中さんに勝っちゃったの。その事実は残るわ。そんなの許せないじゃない。」とスイッチオン。さらにテレビで失神KOを食らった竹中も、リンジィの親父の挑発にスイッチが入ってしまったようで、現役復帰を決意したようです。で、夏央とゆず子は、すでにナチュラルアングルが発生してました。

    で、両雄が見開きで対立。

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    相対する

    熱いな。アングルだった一連の話からナチュラルアングルに変化する流れ。それを、この見開きで完璧に対立していることを決定付けさせる。燃えるな。マーベラスですよおお。

    ちなみに、女の子わんさか出てくるのに、萌え要素がまったくないです。燃えですね。

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  • 「からん」が地味に面白い件

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    「うみねこのなく頃に」をプレイしているんですが、「それ以外(秀吉、譲治、紗音、熊沢、南條)の全員が、いとこ部屋にいることを認める」って、赤で宣言してしまいましたが、ヱリカ嬢がおもっくそ含まれていない気がするんですが(ヱリカ嬢は廊下にいる)、彼女の存在自体が幻想ってオチかコレは…。まあ続きをプレイしよう。

    さて、地味にアフタヌーンで連載している「からん」が面白いんですが。これは何気に熱いです。


    作者は、「神戸在住(AA)」や「巨娘(AA)」の木村紺先生。はじめ、アフタで連載開始された時は、絵柄が今までと違いすぎて、普通に気付きませんでした。

    んで、これが地味に面白いんですよ。どんな話かといえば、中学時代に京都2位という成績の高瀬雅が、女子高校へ進学した女子柔道の部活動の話。伏線のように、初心者で体格も小さいけど、誰よりも練習して才能がある同級生もおり、これからどうなっていくのが楽しみな感じ。

    んで、現在のところ3巻まで発売されていますが、まだ他校との試合もなく、部活内の出来事が中心。舞台となる、京都のお嬢様高校、望月女学院柔道部は弱小。しかし、キャプテン大石萌だけは、別格の実力者。昨年のインターハイで、2年でありながらベスト4で、今年は優勝候補といわれています。

    中学時代に京都2位という成績の高瀬雅は、既に萌先輩以外は倒し、萌先輩と初めて対峙すれば格の違いを見せつけられてしまいました。

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    萌先輩

    ――強い!!!
    と、あまりの強さに歯が立ちませんでした。そんな感じで、桁違いの実力者の主将と、部内NO2の主人公と、その他といった感じのレベル。

    また、その他の中に、新入生が入部すっるまでは唯一の黒帯で、そこから成長が止まった2年生の先輩と、体格的に小さいけど才能を感じさる負けず嫌いな素人同級生と、部内の面子だけでも個性豊かで楽しみです。

    特に、部活動漫画では主人公以外のキャラが時にドラマを生むもの。「からん」では成長の止まった2年生の金春千成と、負けず嫌いの素人九条京が、今後の要注目キャラな感じ。特に、この二人は色々あって、犬猿のキャラ。乱取りでは、金春先輩が京を、素人なのに絞め落としてしまい、今後に遺恨を残しました。

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    絞め落とす

    うーむ、個性豊かな部活動の面子というのはなかなか興味深い。んで、この「からん」が、今のところ最高に熱い展開になるのは、萌先輩との寝技対決。今まで淡々と進んでいた中で、この寝技対決がいきなり熱い展開で燃えるわけで。立ち技では歯が立たない、今年のインターハイ優勝候補の本命の化物に対して「寝技ならわたしは負けないですけどね」と挑発して、寝技対決をするんですが、これがとにかく熱い。

    そもそも柔道において、立ち技では敵わない相手に、寝技なら勝機があるのかといえば、実際のところは分かりません。しかし、今までの柔道漫画において、立ち技では勝てない相手に、寝技で勝機を見出すという展開は数多くありました。

    例えば、「コータローまかりとおる!」。いつ連載再開されるのかと、今でもマガジン(マガスペ)を読みながら楽しみにしていますが、もう永遠に再開される気配がみえません。「コータローまかりとおる」の柔道編は、他の話に比べて異彩ではありますが、個人的には一番好きな話です。ヒロインの麻由美が大活躍するわけですが、彼女が取った戦法は寝技。麻由美がバンバン寝技で強豪を倒すわけですが、作中で寝技の重要性が語られました。

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    寝技の重要性

    寝技にマグレなし!

    寝技にはマグレがなく実力通りの結果があるということ。この格言は、高専柔道の言葉らしいですが、作中で何度も寝技の重要性が語られました。

    立ち技では勝てなくても、寝技で倒すというのは柔道漫画的には、それはそれで燃える展開です。その最もな例は女子柔道漫画の最高傑作「YAWARA」でも、使われた戦法です。

    1本取らなければ意味がないという猪熊柔道。主人公、柔は桁違いの天才で化物でした。もう天才すぎて、昨年の無差別級覇者(藤堂由貴―後にソウル五輪銀メダリスト)相手に、試合中に「この人―――弱い!」と失礼な事を思う、性格の悪さと圧倒的強さを披露します。

    とにかく、柔は天才すぎて、世界の強豪といえども歯が立たない、チートキャラでした。こんな化物の自称ライバルであった、本阿弥さやか。元々、スポーツ万能なお嬢様という設定でしたが、いざ柔道を始めてみれば柔に、まったく歯が立ちませんでした。

    柔と戦えば、速効で投げられて差し歯が取れるという、水戸黄門のような王道展開で敗れ去る黄金パターン。まさに、作中ではカマセ犬という言葉がピッタリでした。

    あ、作中で最もカマセ犬全開だったのはソ連のフルシチョワです。強豪として登場して柔に敗れ、同じカマセ犬キャラのさやかお嬢様にまで負けて、ラストのバルセロナ五輪ではフランスのマルソーのカマセになって1回戦敗退

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    最後までカマセ犬

    特に逸材なのは、フルシチョワはソ連崩壊によって、貧乏生活をしており、日本で柔道のコーチになる生活を蹴ってまでバルセロナ五輪に意気込んだのです。で、柔と戦わずしてカマセ犬として敗れ去ったことです。「ヤワラと本気で戦うには、五輪しかない」と言って、コーチの話を蹴って臨んだのに。同じ境遇だったテレシコワは、柔と本気の勝負をして、全力を出し切り満足して引退したのに、フルシチョワときたら…。

    いつか必ず、もう一度お前と戦う。それまでチャンピオンでいろ、ヤワラ

    ちょ…お前まだ柔道やるのかよ
    まさか4年後のオリンピック目指すのか…、もう引退して日本でコーチしろよ!と本気で心配してしまったんですが、彼女はその後どうなったのか。なんというか泣けます

    話がそれましたが、フルシチョワに続くカマセ犬キャラだったさやかお嬢様。柔のライバルを自称するものの、チートキャラ柔に歯が立たず、苦戦させたことすらありません。毎回出てきて、速効で投げられて差し歯が取れるという方程式で、敗れ去りました。柔に弱いと断言された藤堂由貴と互角程度。挙句の果てには、短大から柔道始めた伊東富士子と引き分けるなど、チートキャラ柔の敵ではありませんでした。

    もちろん、さやかお嬢様は世界でもトップの強豪。ソウル五輪銀メダル、バルセロナ世界選手権優勝…と、世界のトップでありますが、チートキャラの化物である柔には歯が立たず、苦戦すらさせられません。しかし、彼女は最後の最後に柔と互角に戦ってみせたのです。天才相手にどう戦ったかといえば…。

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    天才を追い詰める凡人

    寝技
    「YAWARA」は天才はどうやっても天才で、凡人が勝てないものでした。しかし、凡人さやかお嬢様は、最後のバルセロナ五輪代表選考大会の決勝で、天才チートキャラ柔を初めて苦戦させるどころか、あと一歩まで追い詰めたのでした。立ち技では勝負にならないことを知り、コーチには「立ち技では猪熊柔は500パーセント強い」と言われ、派手好きのお嬢様が立ち技を捨てて、地味な寝技で責め立てる

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    凡人の意地

    最期の最期で、天才に肉薄する凡人…。感動した!

    そんなわけで、立ち技では勝負にならなくても、寝技に勝機を見出すというのは、柔道漫画ではかなり熱い展開であるといえます。で、「からん」も立ち技で歯が立たなかった先輩に寝技で挑むというのは燃える展開なわけですよ。

    あ、ちなみに女子高校の柔道物語といっても「帯をギュッとね!」みたいな、ブルマ+柔道着みたいな萌え要素は絶無です。