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「なつゆらぎ」超ド田舎のひと夏の体験
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2013年03月27日
「なつゆらぎ」が発売されました。
いわゆる少女の「ひと夏の経験」である。といってもエッチな意味でなく、あまり感情を表に出さない都会っ娘が田舎で過ごすひと夏の経験なのですけど。アマゾンの内容紹介は以下の通り。
夏休み。渚は叔母のいる田舎に滞在することになりました。彼女がそこで出会ったのは、亡き祖父が遺した「あるもの」でした。日々の暮らしの中では忘れがちな日本人の原風景。家族、友人、そして…あたりまえの存在があたりまえではなく、特別なものだった――引っ込み思案な少女・渚のひと夏の経験を龍神賞受賞作家・山坂健が紡ぎます。
主人公・渚は教育ママのおかげで勉強に打ち込み他人とあまり関わり合いません。笑い方もよく分からないし、感情ってどうやって出すんだっけ?と自問自答してしまうぐらいです。
渚
そんな渚がひと夏の経験をするのです。
夏休みに母が入院し、その間叔母の家で過ごす事になる。その叔母の家というのが絵に描いたような超ド田舎であります。木のざわめき、川のせせらぎ、鳥や虫や動物の鳴き声が響き渡る素敵な場所。
都会人なら誰しも憧れますね。
日々ストレスが溜まる我々はド田舎の生活というのはある種の憧れのようなものを持ってしまいます。ノスタルジーに浸るというか、郷愁がふつふつと湧き起こるというか。「なつゆらぎ」を読むと、東京を離れド田舎で暮らしたいと何度も思ったものです。
都会人から見れば理想の安らぎがある田舎暮らし。
でも、渚の感想はすっごい冷めていた。自然が奏でるハーモニーも「あー、まあそうなんですかね…」とか「自然とか興味ないんで…」ときたものだ。
この自然の素晴らしさを理解できない渚は田舎暮らしを開始してもひたすら勉強をする。もっと自然の良さを堪能しろよと思うも、そこで渚は「あるもの」と出会うのである。
あるもの
叔母の家の小屋に眠る「あるもの」、それは少女の人形でした。
好奇心で人形の少女のゼンマイをl巻いたら動き出し言葉まで発する。動き出した人形の少女・菜津のと一緒に過ごす事になった渚。この菜津が人形なのに人間以上に感情豊かなのである。またどう見ても幼女というのがいいね。
「なつゆらぎ」は、感情を出さない渚と感情豊かな菜津が一緒に過ごす物語である。これが僕の心の琴線に触れるのですよ。最初はゼンマイを巻いてしまった事を後悔し、菜津に戸惑っていたんでんですけど、一緒に過ごす内に段々と渚が変わっていく様子がなかなかどうして。
段々変わっていく様子がいいんだ
いわゆる感情を出さない少女が感情を出すようになるというのが僕は大好きであります。渚も菜津と一緒に過ごすようになって、最初は田舎の生活なんて興味も示さず、むしろ不便で環境的に悪いとさえ思っていたのに適応しちゃうっていう。
のどかな田舎描写が雰囲気良し。
段々、田舎生活に馴染む中で終わりが来る。
菜津のゼンマイが切れかけてしまいます。しかもゼンマイが壊れており、もう巻けないという。菜津のゼンマイ切れるまでの様子が切ないのなんの。止まっちゃった菜津を見つめる渚の表情にはグッときます。
そして淡々と描かれた「なつゆらぎ」で唯一の山場が来る。
最初に話されたねずみのくだりは最後の伏線となっていたのか。火事になってしまい、動かなくなった菜津の眠る小屋が燃えるわけですけど…そこで渚が自分の感情を縛っていた鎖から解放されるのであった。
最後に見せる笑顔の表情が最高である。
素晴らしい笑顔であった
アーチャーの「いつかの少年のようだった」笑顔に勝るとも劣らない素晴らしい笑顔であります。ラストのハッピーエンドにも心が洗われるような清々しい気持ちにさせてくれます。めっちゃ良かった。疲れ切った現代人のハートを癒してくれます。1巻完結なのも読みやすくていいです。
僕も超がつくド田舎で暮らしたいと思ったものです。
でもこれ郷愁でななんでもなく、ただの現実逃避だった。