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さて…。

ヒーローズ・カムバック (ビッグ コミックス)

「3.11を忘れないためにヒーローズ・カムバック」が発売されました。
細野不二彦先生の提案による東北復興支援プロジェクト。細野先生の他に、ゆうきまさみ先生、吉田戦車先生、島本和彦先生、藤田和日郎先生、高橋留美子先生、荒川弘先生、椎名高志先生、かわぐちかいじ先生の豪華9人の小学館系過去作のヒーローカムバックで懐かしさ全開です。

また、この本の収益と印税が全て被災した子どもたちに本を届ける「大地震出版復興基金」、岩手・宮城・福島の各県庁が運営する震災遺児への育英基金の寄付されるとのこと。漫画を買う事で復興の手助けができます。

<ギャラリーフェイク/細野不二彦>
実際の震災をテーマにしたのは「ギャラリーフェイク」と、かわぐちかいじ先生の「俺しかいない~黒い波を乗り越えて~」の2つ。「ギャラリーフェイク」では、フジタがフジタらしいやり方で被災地支援を行う。

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フジタ

フジタがまた見れたという嬉しさもさることながら、今回収録されている「ギャラリーフェイク」の面白さと完成度の高さは秀逸の一言。文化財を保護するボランティアをはじめて知ったんですけど、実在の宮城歴史資料保全ネットワークの活動にスポットを当てつつ、フジタのダークヒーローとしての活躍、人との関わりを描いていました。

やはり「ギャラリーフェイク」の人との関わりや美術品などを通じ描かれる「美」は最高である。そこに東日本大震災というテーマに真っ向から挑んで素晴らしいエピソードにまとめられています。最後にグッときて胸が熱くなりました。

<うしおととら/藤田和日郎>
懐かしい。懐かしすぎる。
「うしおととら」は僕にとって青春の作品の一つなんですよね。それがあの頃と変わらず読めるのは嬉しいものです。「究極超人あ~る」「犬夜叉」などは後日談を描いた形なんですけど、「うしおととら」は完結前の一つのエピソードを描く形となっています。

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うしおととら

相も変わらない「うしおととら」であった。すげぇ面白かった。
完成度高いです。おそらくはじめて読む方でも十分楽しめるのではないでしょうか。自分が小学生の頃のヒーローであったうしお。うしおの年齢とっくに追い越して今ではおっさんになってしまった僕でもやはり僕の中の変わらぬヒーローでありました。

以前と同じノリの「うしおととら」でしたが、メッセージ性溢れるものでした。チャコちゃんの「いいねえ、生きてるって」の台詞はグッときます。生きてればなんでもできる、やれる事をやろう、というね。いつまでも色褪せぬ「うしおとら」でした。大満足。

<銀の匙/荒川弘>
「ヒーローズ・カムバック」収録の中では唯一連載中の漫画。
ヒーローズカムバックで荒川先生登場とアナウンスされた時は難しいでしょうけど「ハガレン」をまた見たいと思ってたら「銀の匙」でガッカリしたんですよ。えーこのコンセプトで「銀の匙」ってね。ところがどっこい、いい意味で裏切ってくれました。北海道開拓の屯田兵はみな英雄である。

八軒の先祖のエピソード。
脱獄囚だったハチ(仮名)が名前を偽ったまま八軒家にムコ入りする。作中の「言葉」が素晴らしい。ハチが不幸を背負い込むオーラのようなものがあり、理不尽に罪人となったわけですけど、それを激白する「世の中理不尽だらけだべした。自分さ殺して生きていくしかねぇんだよ」という台詞は重い。そしペクシの「でも、魂は誰にも奪うことできない」は胸が熱くなります。理不尽と戦う強さと、希望がありました。

何よりトクさんが素晴らしい!

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トクさん

最初はキンブリーみたいな風貌だったのに、メガネをかければ、あら不思議。ものすごい美少女になったのでした。

<GS美神極楽大作戦!!/椎名高志>
これまた懐かしい。
おキヌちゃんが幽霊ですね。後日談でなく初期の頃の時系列でしょうか。ノリも初期に近い。「GS美神」だけでなく、「一番湯のカナタ」のセイリュート(正確にはプロトタイプですけど)、「MISTERジパング」の信長も登場します。椎名作品のコラボのお祭りといった感じ。過去作のコラボで、上手くまとまっています。

久々に見たおキヌちゃんのペロペロしようと思ったんですけど、美神さんが可愛かった。めがっさ可愛かった。信長とツンデレ議論した事が最期の展開に繋がる構成。デレが少ない、というかツンデレなんて用語なかった時代のツンデレキャラのデレ。これ至高なり

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至高なり

まいりました!
と白旗上げるレベルでニヤニヤしてしまいます。
というか横島本人の前でデレを見せるのはレアすぎるでしょう。すさまじい破壊力である。ノリもテンポも遊び心も素晴らしく、まさにお祭りでしたね。キャラのコラボは人の繋がりを感じます。

<サイボーグ009/島本和彦 >
一発で僕の心の琴線を鷲掴みにしました。
これは素晴らしい。素晴らしすぎるぞ!
発起人の細野先生は後書きで以下のように綴っています。

津波の爪痕が生々しく残る市内の道々に、仮面ライダーやキカイダーなど石ノ森キャラの等身大フィギアが立っていました。そのヒーローたちも、やはり津波に流されて泥まみれになっていたそうですが、街の人々がガレキの中から助け出して泥を洗い流し、元の場所に置き直してくれたということでした。漫画家の一人として「ありがたいなぁ」と思うと同時に、「いや、それはどうなのか?」という違和感が走りました。われわれ漫画家や漫画のキャラクターが、まず被災した人たちに手をさしのべなくては申しわけなさ過ぎると感じたのでした。

石ノ森キャラが「ヒーローズカムバック」が出るきっかけになったわけです。この企画で石ノ森先生の作品を一作入れたかったという事で、島本先生が「サイボーグ009」を描いたという。

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島本版009

島本版「サイボーグ009」は凄いで!
島本先生自身「アオイホノウ」でも熱く語ってたけど「サイボーグ009」へのリスペクトっぷりが半端ない。熱い思いビンビン感じます。しかも内容が「天使編(神々との闘い編)」の続きなんですよね。ご存じ未完のエピソードである。wiki見たほうが詳しく掲載されてますけど、ちょっと簡単に説明しましょう。

「サイボーグ009」は「地下帝国ヨミ編」で完結しています。その後、復活して「怪物島編」「中東編」「移民編」「ローレライの歌編」そして「天使編」が描かれます。で、この「天使編」が未完のまま終了してしまいます。それから「天使編」の仕切り直しというかリメイクとして「神々との闘い編」がスタートするのですが、こちらも未完で終了。明確な敵も出ず最後に無数の円盤が出てきて終わるという物議を醸すラストシーンでした。後に様々な「009」が描かれましたが、結局「天使編(神々との闘い編)」が描かれる事はありませんでした。石ノ森先生の残した構想ノートを下に息子の小野寺丈さんが小説、現在クラサンでコミカライズされている漫画で、完結編が描かれてます。

んで、この島本版「天使編」。
人類に絶望した天使が順類を滅ぼすところからスタートし、「地下帝国ヨミ編」を思い出す。島本版「009」は、「ヨミ編」のリメイクとしても楽しめる二段構え!そして一つの解答を出した。

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一つの答え

人は悪魔になるかもしれないが―神にもなれるかもしれない…」という一つの答えを出してた。最初と最後に無数の円盤が飛び立つのは「神々との闘い編」であり、こういうのを読みたかったんだよという「天使編」でありました。この続きが読みたい!

確実に一見様置いてけぼりの構成なのも素晴らしいですね。「アオイホノオ」によると「009」は「何だかよくわからない」が50%で構成されてたけど、まさにその何だかよくわからないを見事に描いたと思うわけです。

他の収録作品もどれも珠玉のものでありました。
こいつは胸が厚くなる漫画集ですぜ!なにより表紙がいいよね。ヒーロー達がみんなで手をつなぐ表紙なんですよね。まさに人と人の繋がり、人と人の輪といったテーマがあります。

ヒーローズ・カムバック (ビッグ コミックス)
細野 不二彦 ゆうき まさみ 吉田 戦車 島本 和彦+石森プロ 藤田 和日郎 高橋 留美子 荒川 弘 椎名 高志 かわぐち かいじ
小学館 (2013-04-30)


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