なるほど、神ゲーだ…。

「終ノ空」未プレイなんですが、超面白かった!
はじめは、なんだこの電波と思いきや、章ごとに進めていくにつれて謎が解けて行くのは物凄い爽快感でした。ゾクゾクして鳥肌が立ちまくるという。宗教、イジメ、薬物などアレな内容を題材として、複数の主人公の視点で描かれ全てが1本に繋がった時は脳から汁が出るほどの興奮。終盤の王道展開の少年漫画っぷりはマーベラス極まり。シナリオが本当に素晴らしかったのです。まあ、電波とグロさは相当なものですけど。

序章、本編6章からなる物語。1~3章まではサスペンス調のストーリーで、その後に謎が解明されていくというもの。若槻姉妹なんて姉が鑑(かがみ)で妹が司(つかさ)で「らき☆すた」みたいだと思ったら、まさかの…ですよ!

間に挿入される哲学も良い味出しており、途中からストーリーにのめり込んでクリックが止められない止まらないという状態に。ヒロインでは希実香がぶっちきり。血の繋がった妹・羽咲は妹原理主義者としては高ポイント。あとのヒロインは…、いや…ねぇ

以下、ネタバレ全開。

ええ、最初は若槻鏡の幼馴染っぷりに夢中になっていました。

幼馴染とは、スルー能力の無さと見つけたり!
お弁当を主人公の為に一生懸命作ってきても、いざ渡す時には恥ずかしくて渡せない…それこそ理想の幼馴染。ツンデレ幼馴染道を見つけました。もう私が幼馴染にニヤニヤして悶絶する事はないと思っていましたが、とんでもない!若槻鏡こそ、ツンデレ幼馴染の理想郷です。純度100%の天然ものです。

だがしかし、私がニヤニヤ悶絶打った若槻鏡の正体がまさかなのぬいぐるみとか。後から冷静に考えると、物凄いシュールなんですけど。一緒にお風呂に入った事も、方舟で廻されたのも、オンブして語りかけたのもぬいぐるみって、シュールここに極まりですよ!

2週目をすると、最初のほうの伏線が震えるってもの。

由岐「私ってさ…いつから此処にいたんだろう…」
由岐「いつから…私だったんだろう…」
卓司「水上さんはいつから此処にいたの?」
由岐「なら間宮くんはいつから其処にいたの?」
卓司「ぼ、ボクは…ずっと前からいたよ…」
由岐「そう…私も結構前からいたけど、気付かなかった…」

冒頭の屋上での会話ですけど、2週目だと本当に深いな。卓司と由岐は何時からいたんんだってばよ!あと、由岐は序章のラストで白い世界を歩く中で…。

2
白い世界を行く


私はふと向日葵の事を思い出していた。そしてなるほどと思った。
向日葵が供花を連想するか…、そう言えば言ってたな…あいつ
向日葵はキク科の植物だから似てるんだって…。
私はこの白い世界を歩いた事がある。
(中略)
私は白い世界ですべてを思い出していた
きっと夢から覚めたら色んな事を忘れちゃうんだろうな。

とか語っているけど、これって「夏のある日」での皆守とのやり取りの事だと思いますけど。

皆守「向日葵の印象か…なんか本で調べたら向日葵ってキク科の植物なんだってな…
皆守「だから、少し似ているのかな…」
由岐「似てる?何に?」
皆守「そのまま菊だよ…

全てを思い出した由岐姉は、昔の皆守とのやり取りを思い出してなるほどか。やっぱり由岐は間宮皆守が作り出した人格じゃなくて、沢衣村の由岐姉なんでしょうか。

人格と言うか幽霊(?)が1人の中にいて交代していくと判明するわけですが、一通りプレイして、俺の中でこの作品の主人公は間宮卓司様でヒロインは橘希実香だったとしか思えません。2章“It's my own Invention”の希実香ルートこそ俺の中の正史最も美しい最期です

とにかく卓司様に惹かれる。7月2日の卓司様、皆守に自分の中の喧嘩でボコボコにされて漫画を燃やされる。ざくろには、卓司様視点では「ただ漫画がつまらなかったからさ、処分しただけだよ…うん」と述べるも、ざくろ視点では…。

1
ざくろ視点

たださ…この漫画のヒロインが処女じゃなかったからむかついて燃やして、それを動画にアップしてやろうかと思って…

救世主様の脳内変換パねぇ!!
しかし、救世主様は本当に狂っていたのか。いや、間違いなく頭がどうかしていたのは確かなんですが、きちんと過去を把握(?)している点が気になります。

母は狂っている。母は弱い。母はボクを愛しすぎて狂った。ボクの為に狂った。
ボクはお母さんを愛しているけど、彼女の言う事は妄想だ。
彼女の心は完全に壊れていた。だから、お母さんの言う事は信じちゃ駄目だ。
愛してるけど、信じちゃ駄目なんだ。
兄さんはよく知っていた。だから抵抗した

ボクの分身を空へ還そうとした残酷なお母さん

特に、由岐との最期の会話なんて、救世主様は自分の運命を知っていたようにすら思えます。

5
救世主様

大いなるものと同化したいと人は思う…だけどそれは死となんら変わらない…だから人は大いなるものとの同化を…そして死も恐れる…

これって1周した後に読むと、破壊者に消されて調和者として生きる事への抵抗のようにも思えます。

そんな感じで伏線満載で「お!」という発見と伏線回収が素晴らしい中で一つ今だに納得できないのが最初のざくろメール。これ一体誰が出したんでしょうか。

序章の夢の世界(?)で、ざくろは「最初で最後のイタズラをしてやろうかと…」と述べていますけど、本当にざくろの霊が出したメールなのか。

2012年7月12日、18時42分
ざくろがスパイラルマタイという名の集団飛び降り自殺決行。
現場に居合わせた卓司はざくろの携帯を使って救急車を呼び、現場の写真を撮った後に逃走。以降は卓司がざくろの携帯を所持。秘密基地でざくろの死体に遭遇する幻覚を見て気絶。

22時30分
2日ぶりに皆守が目覚める。以降は皆守が体を使う。CDを持っていて驚くが、由岐のものと思って持ち帰る。

22時44分
ざくろメール「8にちごしにます」のメールを画像付きで158人に一斉送信する。

3
ざくろのメール

皆守が帰宅。由岐は洋楽CDを買ったつもりだったけどアニメのCDで驚く。ちなみに学校から家までは電車通学が基本であり、走っても大分時間がかかる。秘密基地から帰宅までの間に22時44分になっている。

つまり、22時44分のざくろメールは誰も送れない

・ざくろが1通目のメールを送った時に、ざくろは既に死んでる。
・ざくろの携帯は卓司が持っているはずだけど、22時44分は体を使っているのは皆守

卓司も「なんだ…この送信時間」と不審がっていました。ちなみに卓司がざくろの携帯を持ち帰ってポケットに入れてたた事に気付いたのは、14日の夜。「何だこれ…」とポケットが膨れている事に違和感を感じました。

ちょっと待ってくれ。
12日の夕方に持ち帰って、14日の夜に気付くまでずーっとズボンのポケットに入れてて、その間に卓司も由岐も皆守も気付かなかったのでしょうか。勿論、CDを持っていた事に気付かなかったからあり得るっちゃあり得るんですが。

ざくろ携帯、最大の謎は5人の指紋

4
指紋は5つ

「なぜか高島さんの携帯についていた指紋は五つ。」
「高島さんの携帯についていた指紋で分かっているのは、私のもの、橘さんのもの、清川先生のもの、そしてもちろん…高島さんのもの…分からないのは一つだけ」

卓司=由岐の指紋です。高島の指紋は勿論ついてるわけで、救世主様の代わりに瀬名川にメールを送った希実香の指紋も当然ついています。もう一つの指紋の正体は3章で聡子がざくろ携帯を触ったと判明するわけで、一件落着…って、おい、清川先生の指紋がなんでついてるんだってばよ!作中で清川先生がざくろ携帯を触った描写は一切ありません。

1通目のざくろメールを送ったのは清川先生の可能性もあるんだけど、何も語られていないので不明です。不明と言えば、リアル卓司くんの幼少時代と、由岐や卓司が見ている皆守の姿がそっくり何だけど、どういう意味合いがあるのでしょうか。

6
リアル卓司 / 皆守

なんで皆守の容姿がリアル卓司とまったく同じなのか。
第三者から見れば、みんな容姿は同じなんですけど。
間宮の容姿といえば、3章の冒頭でざくろが屋上で見た間宮は誰だったのか。自分の事を「ボク」と呼んでるくせにタバコ吸ってヤンキー系だし。卓司か皆守かと思いましたが、どうも全然別人格のような。もう1人いるんでしょうか。

最大の謎といえば、希実香のパンツです。

7
希実香のパンツ

白パンツだったのが、最後のダイブの時には黒パンツになっていたでござる。ただ影で黒く見えるだけなのか、短期間で穿き変えたのか。謎です。

改めて、救世主様が覚醒してから希実香と一緒にダイブする姿はあまりに美しかったのです。ホロリと感動的で美しい終焉。あざといぐらいに音楽もマッチして涙腺を刺激。個人的にぶっちぎりの良シナリオ。

救世主様と希実香の掛け合いは、イカレた電波の中での癒し。「殴るぞ救世主様!」は、屈指の名台詞ですよ。希実香が可愛すぎて辛い…。ラストの希実香の告白が胸熱すぎる。

「この人は少し抜けてるけど、やっぱり本当に救世主様なんだと思いました…他の人にとってはどうか知らないですけど、私にとっては間違いなく救世主様です」
「救世主様は…あなたなんだ…私の救世主様は…」
「私をちゃんと見てくれたのは救世主様だけだった…ちゃんと話をして、ちゃんと目をみて、ちゃんと怒ったり、笑ったり、困ったり…いろいろな感情をみせてくれて…」
「救世主様は色々な事を私に教えて下さいました…。世界は残酷だけど…世界は汚いけど…でも美しいんだって…」

最後に救世主様と希実香がお互い救済し、抱き合いながら自由落下して終わるルートは何度やっても良すぎる。世界がなんだ。償いがなんだ。高島がなんだ。呪いがなんだ。死がなんだ。世界はどんな短い時間でも意味を持つ。意義を持つ。もう終わりが近づく。静かに目をつぶった。

それでも人よ。幸福たれ!


素晴らしき日々~不連続存在~公式ビジュアルアーカイヴ
パンピンワークス
双葉社
売り上げランキング: 11206